※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?

2.政略結婚のすゝめ(4)

***


 それから数週間後のとある休日のこと。
 わたしはアルバート殿下に連れられて、王宮へと向かっていた。


「わざわざお声掛け戴き、ありがとうございます。四大公爵家の会合――――もうそんな時期なんですね。父も意地が悪いなぁ。報せてくれれば良かったのに」

「ミラには報せられない事情があったんだよ。まあ、だからこそ、こうして僕がお膳立てしているわけだけれど」


 そう言って殿下は朗らかに微笑む。


「事情、ですか?」


 そもそもお父様は、三年前からわたしを王都に連れてこなくなった。理由も教えてくれないし、ソーちゃんに会える機会を一方的に奪われて、釈然としないのだけれども。


「そういえば、ソーちゃんは? ソーちゃんだってお父様にお会いできる貴重な機会でしょう? 誘わなくて良かったのですか?」

「大丈夫。あいつは既に王宮に居るよ。ソルリヴァイにとって、この会合はとても大事なものだからね。僕が声を掛けなくても問題ないんだ」

「……そう、なのですか?」


 わたしと一緒に王宮に通っていた頃はそんな風には見えなかったけど、ソーちゃんは未来の公爵様だもの。後継者として、意識が変わってきたのかもしれない。


「さて、着いたよ」


 アルバート殿下にエスコートされ、王宮に用意された控えの間へと向かう。
 何もかもが懐かしい。ここでソーちゃんと遊んだなぁとか、色んなことを思い出してしまう。

 殿下はそっと人差し指を立て、控えの間の扉を開ける。
 豪奢で広々とした室内。そんな中、二人の男性が突っ立ったまま、何かを言い合っているのが目に飛び込んでくる。どちらもよく知っている顔――――お父様とソーちゃんだ。


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