※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「褒めるなんて……わたくしは、その…………」

「ご自分の方が優れているとでも思っているのかしら? シェイマス様がお優しいから良いものの、婚約者を立てられないなんてあり得ない。どうかしていると思うわ」

「――――ミランダ、止めろ」

(エーファのことを悪く言うのは許せない)


 横目でミランダのことを睨めば、眉根を寄せて瞳を潤ませる。


「シェイマス様……だけど…………」

「僕は別に、エーファに褒められたいだなんて思っていない」


 キッパリとそう口にし、僕はエーファを見つめる。

 エーファは、王子だからというだけでチヤホヤする大人とも、見た目とステイタスだけで僕に言い寄る令嬢たちとも違う。本気で僕を想い、敬ってくれている。そうと分かっていて、エーファに褒められたいと思う筈がない。


「そっかぁ……そうですよねぇ」


 ミランダはそう言って瞳を輝かせると、僕の元へと擦り寄ってくる。


(――――どうしてミランダが喜ぶんだ?)


 ほんのりと首を傾げつつ、僕はエーファを見つめる。

 僕が喜ばせたい相手はこの世でただ一人、エーファだけだ。それなのに肝心なエーファはいつもの様に、ただただ美しく微笑んでいる。


「殿下……」


 僕を呼ぶエーファは美しく、あまりにも愛おしい。今すぐ抱き締めたくて堪らなかった。


(結婚したら――――)


 僕がエーファを幸せにしよう。
 この腕でエーファを抱き締めて、僕が彼女を笑顔にする。全力で守るし、何よりも大事にする。僕の愛情はエーファだけのものなのだと、一生をかけて伝えていきたい。


(早く明日が来ればいい)


 エーファと歩む未来が欲しい――――そんなことを心から願った。



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