※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
【少し好感を持たれた程度ではダメだ。身体に心、財産に名誉、家族や友人に至るまで――――相手の持っているもの全てを己に差し出させろ】

【そんな……そんなこと言ったって……】

【考えろ、アイナ。もっと真剣に、本気を出して考えろ。
トミーが何を、どんな言葉を求めているのか。
欲望を引き出せ。愛に溺れさせろ。心酔させ、己の前に跪かせろ! 全力で愛を叫ばせるのだ】


 ダミアンの言葉に目を見開く。
 それは雷に打たれたかのような気分だった。


(この男が何を求めているか……)


 全神経を研ぎ澄ませ、あたしはトミーのことを見つめる。
 彼が今、一番何を求めているのか――――ダミアンが言いたいことが、なんとなく分かった気がした。


「――――ねぇ、わたくし、貴方のことをもっともっと知りたいわ。だって、トミーさまはわたくしが出会った人間の中で、一番素敵な人なんですもの」


 甘えるように見上げれば、トミーの瞳の色が一気に変わる。
 

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