※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「わたくしを脅そうというの⁉
だけど……だけど! そんなことをしたら、貴方だってタダじゃ済まないわよ! わたくしが貴方に指示をされてやったことだと伝えるわ! 当然でしょう⁉」

「なぁに、私が商人と繋がっている証拠はなにもない。トミーはあくまでこの家にしか出入りをしていないのだから。
それに、私自身はラグエル伯爵と関わりもなければ、毒を混ぜた事実もない。有るのは君の証言だけ。それだけで私を罰することなどできはしないだろう? 君が私のことを思い、勝手にしたことだ」


 なんて身勝手な――――あまりにも酷い二人の主張に、あたしは拳を震わせる。

 間違いない。
 お父さまの遺書を準備させたのもロズウェルだろう。自分とは無関係のように見せかけ、幾重にも人を介して、入念に準備をさせたに違いない。


「――――全く、人間というのは愚かな生き物だな」


 その時、ダミアンの声が不気味に響き渡り、義母とロズウェルは一斉にこちらを振り返った。


「な……! 何なの貴方! 一体どうやってここへ………」


 そこで、ようやくあたしの存在に気づいたのだろう。義母もロズウェルも、大きく目を見開き、口をハクハクと開閉している。


< 501 / 528 >

この作品をシェア

pagetop