※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「……ちょっと! 貴方、怪我していらっしゃるじゃありませんか!」


 よく見れば、彼は腕に大きな傷を負っていた。
 かなり痛むのだろう。相当我慢をしていたらしく、彼の額には大粒の汗が浮かんでいる。


「早く、こちらに座ってください」

「一体何をする気です?」


 クロシェットは傷口に手をかざし、力を込める。その瞬間、眩く柔らかい光が二人を包み込み、あっという間に傷を癒やした。


「すごい……! 傷が治っている」


 男性は角度を変えながら、先程まで怪我していた腕をまじまじと見つめる。


「本当になんとお礼を言って良いか……ありがとうございます、聖女さま」

「そんな。お礼を言われるほどのことではございません。できて当然のことですから」

「当然? そんな馬鹿な! これは貴女にしかできないことですよ」

「そう……なのですか?」


 クロシェットの言葉に、男性は力強く頷く。


「貴女は隣国のご出身でしょう? 
もしも貴女が我が国で生まれていたら、すぐに王宮で保護されていたに違いありません。貴女はそれだけ貴重で、素晴らしい力をお持ちなんですよ?」


 まさか――――そう口にしようとして思い留まる。
 訳のわからないことだらけだが、思い当たる節が全くないわけでもない。
 ザックやその仲間たちの発言、ウル達の反応を思い返すに、引っかかるものがあるのだが。


「ひとまず、俺の屋敷に来ませんか? 助けていただいたお礼をさせていただきたいです。貴女も、状況の整理をしたいでしょうし」


 男性はそう言って穏やかに微笑む。
 クロシェットは躊躇いつつも、コクリと静かに頷いた。


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