国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
19.護るべき人
 ジェシカが隣国のアリハンスへ出立する日がやってきた。その移動も必要最小限の人間で構成しろ、という大臣たちからの言葉によって馬車は二台。一台はジェシカとその護衛騎士であるフローラとエセラ、それからジェシカ付きの侍女。もう一台には近衛騎士隊から騎士が四人。アリーバ山脈を越えることから、対魔獣用、そして対野盗用の騎士たちだ。
 一般的にアリーバ山脈を越えて移動する者は金持ちが多い。それは貴族も商人も。金持ちは護衛を雇ってこの山脈を超える。たかが七日の短縮であっても、商人にとってはそれが利益に大きな差を生む場合だってある。だからこそ、山脈の麓では野盗に襲われることも多い。
 魔獣に出会ったら――。
 野盗に出会ったら――。
 この人数でジェシカを守ることができるのか、というのは際どいラインだった。恐らくこれを提案してきた者の中には、ジェシカを亡き者にしてしまってもかまわない、彼女に同行した者の命が散ってもかまわない、とそう考えている者もいるのだろう、と推測したくなるような人数だった。
 国王と宰相は反対したようだが、それでも大臣たちの意見が勝った。近衛騎士たちも同行するのだから、心配には及ばないだろうとかなんとか、そういう言い訳をして。
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