国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
24.人の子
 フローラは騎士団の休暇の間を、クリスの研究室で過ごすことになった。
 そして彼と一緒にいることで気付いたのだが、基本的にクリスは研究室で寝泊まりをしているらしい。休みの日に屋敷に戻るようになったのは、フローラと付き合いを始めてから、だとか。
 そういえば、彼の仕事の様子は何も知らないなと思うフローラだが、こうやって知らないことを知るということは新しい発見であって面白い。恐らくクリスも、フローラの仕事の様子はあまり知らないだろう。
 クリスはその日の勤務を終えると、フローラと共に彼女の家へと帰る。彼女と共に仕事をして、彼女と共に家で過ごす。クリスにとっては四六時中フローラと一緒にいられる時間を手に入れたわけだ。一か月離れていたその時間を取り戻すかのように。
 その間、クリスは彼女との結婚を口にしていた。もちろん、それはフローラがアリハンスに行く前にも言われたことで、早かれ遅かれそうなるとは思ってはいたのだが。
「できれば、あなたのお父様にご挨拶に伺いたいのですが」
 フローラの休みも残すところあと一日となったとき。彼女の家で夕食を終え、二人でのんびりとくつろいでいた時間に、クリスがそんなことを言い出した。
「あ、はい。そうですね」
 結婚という話であれば、二人だけの問題ではない。だからクリスもフローラの親に会いたいということを口にしたようだ。
「あの、実は……。私もこちらに来てから一度も……、実家には戻っていなくて。父には、ここ二年以上、連絡もしていないのです」
< 175 / 254 >

この作品をシェア

pagetop