国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
29.聖人の力
 フローラとクリスはアダムに案内されて、ナッティを閉じ込めている監禁部屋へと向かった。今はあの光魔法の使い手たちがナッティの力を拘束しているとのこと。この拘束にも時間的制約があるため、一日に何度もかけ直さないといけないらしい。
 アダムは二人を案内すると、また先ほどの部屋へと戻っていった。これから決めるべきことがいろいろとあるのだろう。
 上層部が慌ただしく動いている。
 フローラは同僚の女性騎士と共に、ナッティがいる監禁部屋へと入った。本来であれば地下牢に押し込めておくのだが、闇魔法の使い手である以上、そこに入れておくのは危険であると判断され、こうやって人の目に多くつく監禁部屋へと閉じ込められている。
 隣の監禁部屋よりも少し高いところに位置している監視部屋にはナッティに拘束魔法をかけている光魔法の使い手である魔導士が二人いた。一人がクリスに二次元発言を繰り返していたあの男と、もう一人はクリスの微妙な魔力の変化に気付いた女性の魔導士。
「あ、副団長」
 クリスに気付いたのは女性の方だ。
「闇魔法はどうなっている?」
「使えないように術を施していますが、私たちの力では一度につき一時間が限界です。彼と交代でかける必要がありますが、私たちの魔力もいつまで持つかわかりません」
 なるほど、とクリスは頷く。
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