国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
7.魔法の教育
「あの……。今日は、どうぞよろしくお願いします」
 頭を下げたフローラは、珍しく魔導士のローブを纏っている。
『魔法の練習をするなら、ローブの方がいいだろう』
 そんな魔導士団団長であるノルトの一声がきっかけであった。魔導士のローブというものは、その魔力が高められるような力が施されているらしい。
 何度かの逢瀬を重ね、いや、彼らの場合は逢瀬になっていないのだが、それでも何度か二人きりで会う機会を重ねていた。
 そして今日も幾度目かの二人で会う日。こうしてフローラがクリスから魔法を教えてもらう日となった。
「あなたにはこのような恰好も似合いますね」
 長い髪には魔力が宿るとも言われている。魔導士に長髪が多いのはその理由だ。だがノルトのように「鬱陶しい」と言って、短くするものも多い。
 クリスはフローラの銀白色の髪を一束手にすると、そこへと口づけた。
「あ、あの……、クリス様。何を……」
「少し、私の魔力をあなたに注いでみました」
 最初からクリスのテンポにあたふたしてしまうフローラだが、今日は一応休日扱いになっている。一応、というのは騎士団としてのお仕事はお休み、ということだ。
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