ひとりぼっちのさくらんぼ
第五章

第一話


「なんかこれ、ヤバいよ」



あたしの背筋に冷たいものが流れていく。



「早いうちに警察に行ったほうがいいよ」



お姉さんもそう思ったのか、市原さんに同じことを伝えている。



「一旦家に戻るよ。ちゃんと準備して、きちんと警察に相談しに行く」



「人通りの多い道を選ぶとか、安心出来る道を通るとか、市原さんの安全を考えたほうがいいよ」
と、あたしはお姉さんに言う。



お姉さんは、
「あの、市原くんの家までついて行ってもいい?」
と、どちらに言うでもなく、うつむいて呟いた。



市原さんはお姉さんに笑顔を見せて、
「大丈夫だよ、オレは平気だから。上条さんのほうが危ない目に遭わないように気をつけてほしいよ」
と、穏やかに言う。



「だけど……、心配だよ。近くまでならいいでしょ?」



お姉さんの声が少し震えている。

あたしも胸騒ぎがする。



市原さんは、
「ありがとう」
と、歩き出した。

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