ひとりぼっちのさくらんぼ

第四話


平成十四年。

冬。

薄暗い空。

もうすぐ雪が降るんじゃないかな。

窓の外は北風がビュービューと、音を立てている。




リハビリといくつかの検査を受けて。

あたしは病室に戻った。



事故に遭って。

丸三日間、眠っていたみたい。



その間は何か、とんでもない夢を見ていた気がする。

疲れちゃうような。

でも。

楽しかったような。

夢の内容は、覚えてないんだけど。





目覚めてから、高田くんに会った。

授業のノートとか、プリントとか。

あたしのために持って来てくれた。




でも。

何でだろう?




あんなに好きだったのに。

事故に遭うくらい、失恋してショックだったのに。



高田くんとふたり、病室で話していても。

あたし、ときめいたりしなかった。



ドキドキしない。

あの笑い声を聞いても。

さわやかな笑顔を見ても。




代わりに思い知る。

あぁ、あたしの恋って終わったんだなって。

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