ひとりぼっちのさくらんぼ

第三話


「まずは、あなたの覚えていることを教えて」



お姉さんの家に帰って来るなり、お姉さんはあたしの目の前に紙とペンを置いた。



「書き出してもいいし、メモとか、自由に使っていいから、情報を整理しようよ」



あたしはうなずき、リビングのソファーに座ってペンを握ろうとした。

やっぱり、ペンは持てない。



「覚えていること……。あたしの基本的な情報は覚えているよ。生年月日、住所、電話番号、学校名とか」

「クラスメートは?」

「……もともと友達いないから、あんまり覚えてないけれど」

「でも昨日、高田くんは覚えてたよね?」



お姉さんの質問に、あたしは顔が赤くなる。



「……その名前、言わないで」

「なんで?」

「なんか、恥ずかしくなるから」



そう言ったあたしに、お姉さんは不思議な表情を見せる。



「あれ?そんなに好きだったっけ?」

「好きとか、普通に言わないでっ」

「いいじゃん、誰も聞いてないよ」

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