内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
過去の恋だと割り切れない
暦は三月。桜の開花はもう少し先だが、ぐんぐんと気温が上がって春めいた景色になった。

しかし今の果歩には新緑の季節を喜ぶ余裕も、読書をする時間もなく、毎日がバタバタと慌ただしい。

「芽依(めい)、もう少し食べよ。ほら、おだしがしみたニンジンさんは美味しいよ。あーんして。あっ、新(あらた)、口に入れすぎ。出して出して。泣かないで、怒ったんじゃないよ。ゆっくりモグモグ……芽依、食べ物をポイしないの!」

テーブル付きの子供椅子に座っているのは、生後十か月になった新と芽依。

果歩が昨年の五月に産んだ男女の双子である。

新の方が少し大きいが、ふたりの顔はそっくりで、やや垂れ目のぱっちり二重とサクランボのような色艶の唇、ぷっくりとした頬が可愛らしい。

まだ乳児なのに美形だねと知り合いに褒められたことがあり、どうやら卓也に似たようだ。

それをつらいと感じず、むしろ可愛いから父親似でよかったとさえ思っている。

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