罰ゲームで私はウソの告白をされるそうです~モブ令嬢なのに初恋をこじらせているヤンデレ王子に溺愛されています~
12 新しい罰ゲームが決まりました
リナリアとシオンは、テーブルを挟んでソファーに向かい合って座った。カードを混ぜる手を止めたシオンは、慣れた手つきで四十八枚のカードを伏せたままテーブルに横一列に広げる。
「リナリアは初めてだから、簡単な勝負にしようね。このカードの中から一枚ずつ選んで、より強いカードを引いたほうが勝ち」
「分かりました」
シオンは「お先にどうぞ」とリナリアに先手を譲ってくれた。
(この勝負は、運任せだから考えても仕方ないわね)
リナリアが右端のカードを一枚めくると、カードには王冠をかぶった男性のイラストが描かれていて、その下には『キング(王)』と書かれていた。
(やったわ! 強そうなカードが引けた)
シオンを見ると、口元に手を当ててクスクスと笑っている。
「良いカードが引けたようだね」
「どうしてそれを!?」
「だって、全部顔に出ているんだもの。リナリアは可愛いね」
シオンの言葉で頬が赤くなってしまう。こういう言葉がサラリと出てくるからこそ『恋多き男』のウワサは本当だと思う。
シオンは、優雅な手つきでテーブルの上に並べられたカードを一枚めくり、満面の笑みでカードをリナリアに見せた。そのカードには、複数の民衆が描かれていて、イラストの下には『モブ(群衆)』と書かれている。
「リナリアは?」
シオンにキングのカードを見せたリナリアは「これって私の勝ちですよね?」と微笑んだ。
「そうだよ……って言ってあげたいけど残念。リナリアが引いたキングのカードは確かに強いカードだけど、キングは、唯一、モブには勝てないんだ」
「え? どうしてですか?」
「だって、モブがいないとキングは存在できないからね。一人で『私は王だ』って叫んでも王にはなれないでしょう?」
「そっか……そうですね」
「それに、革命を起こすのも群衆だからね」
シオンの言う通りで、平和なこの国では考えられないが、遠い他国では誤った酷い政治に対して反乱や革命が起こったりもするそうだ。
「えっと、じゃあ、この勝負は私の負けですか?」
シオンがコクリと頷いたのを見て、リナリアは肩を落とした。
(殿下の悪評を消したかったのに……)
気を落としながらもリナリアは、「罰ゲームを決めてください」と伝える。
「うーん、リナリアにしてほしいことがたくさんありすぎて……」
「私が殿下にできることが、そんなにたくさんあるのですか?」
一つも思いつかないでいると、シオンは「もちろんだよ」と肯定する。
「でもそうだね、リナリアに嫌われたくないから、一番簡単なものにしよう。リナリア、私の恋人になって」
リナリアがシオンの言葉を理解するのに数十秒。たっぷり時間を空けてからリナリアは叫んだ。
「ええっ!? な、何を!? そんなのムリです!」
「ムリなの?」
悲しそうな瞳を向けるシオンに、心臓を鷲づかみにされながらもリナリアは首を左右に振る。
「ムリに決まっています!」
「そう……」
シオンは、人差し指を軽く自身のあごに添えながら少し考えるような素振りを見せた。
「……そっか、私の悪評を消すために、リナリアに『恋人のふり』をしてほしかったんだけど、ムリなんだね」
「え? 恋人のふり、ですか?」
「そう、ふり」
シオンは笑顔で頷いた。
「ほら、リナリアは私の悪評を消したいって言ってくれたでしょう? それなら、私の『恋多き男』というウワサも一緒に消してしまいたいんだ。このウワサはこの国の王子としては不名誉だからね。だから、リナリアが協力してくれたら嬉しいなって思ったんだけど……」
「あっ、そういう意味ですか! 私ったら勝手に勘違いして取り乱してすみません」
「良いんだよ。私の言い方も悪かったね」
「いえ」
自分に都合の良い想像をしてしまい、恥ずかしくてシオンの顔が見られない。
(もう私ったら、本当にもう……!)
リナリアは、熱を持つ頬を両手で押さえながら「そういうことでしたら、ご協力させていただきます」と消えそうな声で答えた。
「ありがとう、リナリア。嬉しいよ」
そう言いながらソファーから立ち上がったシオンは、なぜかリナリアの隣に座る。
「殿下?」
シオンは優しそうな笑みを浮かべながらリナリアの手に自分の両手を重ねた。
「じゃあ、今から私と恋人のふりをする練習をしようね。罰ゲームだから、もちろんリナリアに拒否権はないよ」
リナリアは、なぜか一瞬だけ肉食獣に追い詰められたような恐怖を感じたが、すぐにシオンの優しい微笑みにかき消された。
「リナリアは初めてだから、簡単な勝負にしようね。このカードの中から一枚ずつ選んで、より強いカードを引いたほうが勝ち」
「分かりました」
シオンは「お先にどうぞ」とリナリアに先手を譲ってくれた。
(この勝負は、運任せだから考えても仕方ないわね)
リナリアが右端のカードを一枚めくると、カードには王冠をかぶった男性のイラストが描かれていて、その下には『キング(王)』と書かれていた。
(やったわ! 強そうなカードが引けた)
シオンを見ると、口元に手を当ててクスクスと笑っている。
「良いカードが引けたようだね」
「どうしてそれを!?」
「だって、全部顔に出ているんだもの。リナリアは可愛いね」
シオンの言葉で頬が赤くなってしまう。こういう言葉がサラリと出てくるからこそ『恋多き男』のウワサは本当だと思う。
シオンは、優雅な手つきでテーブルの上に並べられたカードを一枚めくり、満面の笑みでカードをリナリアに見せた。そのカードには、複数の民衆が描かれていて、イラストの下には『モブ(群衆)』と書かれている。
「リナリアは?」
シオンにキングのカードを見せたリナリアは「これって私の勝ちですよね?」と微笑んだ。
「そうだよ……って言ってあげたいけど残念。リナリアが引いたキングのカードは確かに強いカードだけど、キングは、唯一、モブには勝てないんだ」
「え? どうしてですか?」
「だって、モブがいないとキングは存在できないからね。一人で『私は王だ』って叫んでも王にはなれないでしょう?」
「そっか……そうですね」
「それに、革命を起こすのも群衆だからね」
シオンの言う通りで、平和なこの国では考えられないが、遠い他国では誤った酷い政治に対して反乱や革命が起こったりもするそうだ。
「えっと、じゃあ、この勝負は私の負けですか?」
シオンがコクリと頷いたのを見て、リナリアは肩を落とした。
(殿下の悪評を消したかったのに……)
気を落としながらもリナリアは、「罰ゲームを決めてください」と伝える。
「うーん、リナリアにしてほしいことがたくさんありすぎて……」
「私が殿下にできることが、そんなにたくさんあるのですか?」
一つも思いつかないでいると、シオンは「もちろんだよ」と肯定する。
「でもそうだね、リナリアに嫌われたくないから、一番簡単なものにしよう。リナリア、私の恋人になって」
リナリアがシオンの言葉を理解するのに数十秒。たっぷり時間を空けてからリナリアは叫んだ。
「ええっ!? な、何を!? そんなのムリです!」
「ムリなの?」
悲しそうな瞳を向けるシオンに、心臓を鷲づかみにされながらもリナリアは首を左右に振る。
「ムリに決まっています!」
「そう……」
シオンは、人差し指を軽く自身のあごに添えながら少し考えるような素振りを見せた。
「……そっか、私の悪評を消すために、リナリアに『恋人のふり』をしてほしかったんだけど、ムリなんだね」
「え? 恋人のふり、ですか?」
「そう、ふり」
シオンは笑顔で頷いた。
「ほら、リナリアは私の悪評を消したいって言ってくれたでしょう? それなら、私の『恋多き男』というウワサも一緒に消してしまいたいんだ。このウワサはこの国の王子としては不名誉だからね。だから、リナリアが協力してくれたら嬉しいなって思ったんだけど……」
「あっ、そういう意味ですか! 私ったら勝手に勘違いして取り乱してすみません」
「良いんだよ。私の言い方も悪かったね」
「いえ」
自分に都合の良い想像をしてしまい、恥ずかしくてシオンの顔が見られない。
(もう私ったら、本当にもう……!)
リナリアは、熱を持つ頬を両手で押さえながら「そういうことでしたら、ご協力させていただきます」と消えそうな声で答えた。
「ありがとう、リナリア。嬉しいよ」
そう言いながらソファーから立ち上がったシオンは、なぜかリナリアの隣に座る。
「殿下?」
シオンは優しそうな笑みを浮かべながらリナリアの手に自分の両手を重ねた。
「じゃあ、今から私と恋人のふりをする練習をしようね。罰ゲームだから、もちろんリナリアに拒否権はないよ」
リナリアは、なぜか一瞬だけ肉食獣に追い詰められたような恐怖を感じたが、すぐにシオンの優しい微笑みにかき消された。