罰ゲームで私はウソの告白をされるそうです~モブ令嬢なのに初恋をこじらせているヤンデレ王子に溺愛されています~
26 サジェスに無理やり連れて行かれました①
シオンとリナリアを乗せた王家の馬車がリナリアの家にたどり着いた。シオンは当たり前のようにリナリアをエスコートしてくれる。
「また明日ね」
「はい、また明日」
シオンを見送ろうとその場に残っていると、シオンは「私がリナリアを見送りたいから」と言って先に家に入るように言われた。
(愛し合っている婚約者同士って、きっとこんな感じなのかな?)
演技だと分かっていても、シオンに大切にされると嬉しくなってしまう。家に入ると、メイドたちが「おかえりなさいませ、お嬢様」と笑顔で出迎えてくれた。
「お嬢様、学園はどうでしたか?」
「ただいま」と返事をしたリナリアは、「今日はとっても楽しかったわ」と微笑んだ。
それから一週間、シオンとの恋人のふりは、リナリアにとって夢のように幸せな日々だった。
恋人のふりを始めた日から、変わったことがあるとすれば、シオンが毎朝リナリアの花束を贈ってくれるようになったことだ。
今朝もシオンは両手に抱えきれないほどのリナリアの花束をリナリアに手渡した。
「ありがとうございます。シオン、もしかして私の両親のマネをしているんですか?」
シオンは「どうだろうね?」と言いながらクスッと笑う。
一週間、ずっと一緒に登下校するうちに、シオンとはこれくらいの冗談は言い合えるようになっていた。
「マネでも嬉しいです」
花束は学園には持って行けないので、メイドに渡してから二人で馬車に乗り込み学園へと向かう。
馬車の中では、隣同士に座り手を繋ぐことが当たり前になっていた。シオンの美しい顔も見慣れたはずなのに、シオンの近くにいると未だにドキドキしてしまう。
(むしろ、前よりひどくなっているかも……)
心臓の音が隣のシオンに聞こえないか心配していると、シオンは「そういえば」と口を開いた。
「今日は、放課後に用事があるから、この馬車を使って先に帰ってもらえるかな?」
「え? シオンの用事が終わるまで待ちますよ」
「それはダメ。危ないから」
リナリアが「何が危ないんですか?」と聞いても、シオンはニッコリと微笑むだけだった。
「リナリア、決して一人にならないでね?」
「えっと、はい。ケイトと一緒にいるので大丈夫です」
シオンはその言葉を聞いて安心したようで「うん」と可愛くうなずいた。
(学園内で起こる危ないことってなんだろう? 最近、平和すぎて忘れてしまっていたけど、もしかして私が一人だったら、またローレルに絡まれたりでもするのかな?)
それは怖いと思い、リナリアは学園内で一人にならないように気をつけた。あっと言う間に放課後になり、教室をあとにしてケイトと一緒に馬車の待合室に向かって歩き出す。
その途中でケイトが「あ、忘れ物しちゃったわ。ちょっと待ってて、すぐに取ってくるから」と、小走りで今来た通路を戻っていった。
その背中に向かってリナリアは「急がなくていいよー」と声をかけた。シオンには『一人にならないで』と言われたが、ほんの数分くらいなら大丈夫だろうとリナリアは思った。
「おい」
背後から声をかけられ振り返ると、そこには派手な赤髪の男子生徒が腕を組みながらこちらを睨みつけている。
「サジェス……」
とっさに逃げようと走ると、すぐに追いつかれ左手首をつかまれた。
「逃げるな。お前に話がある!」
「痛いっ!? 離して!」
「うるさい、いいからこっちに来い!」
無理やり引っ張られ放課後には人気《ひとけ》がないガーデンの休憩所に連れていかれる。リナリアがサジェスの腕を振り払おうと何度も力を込めると、サジェスはようやく左手首を離してくれた。
力加減を知らないのか、サジェスにつかまれていた箇所が赤くなってしまっている。リナリアは、赤くなった左手首を自分の胸にかかえながらサジェスを睨みつけた。
「どうして私にこんなことをするの?」
「うっ」と一瞬言葉につまったサジェスは、視線をそらしながら「だから、話があるって言っただろう!」といらだっている。
「貴方が何を話したくて怒っているのか知らないけど、怒りたいのは私のほうよ! どうして嫌いな人に関わろうとするの? 私のことが嫌いなら関わらなかったらいいじゃない!」
それなのにサジェスは、事あるごとに関わってきては、リナリアを言葉で傷つける。
「そんなに、私がケイトの友達なのが気に入らないの?」
「ちがっ……! ちょっと落ち着け!」
サジェスにガシッと両肩をつかまれた。リナリアが驚いていると、サジェスは真っすぐにリナリアを睨みつけてくる。
「あのな、お前、騙されてるから!」
「は?」
意味が分からずサジェスを見ると、サジェスは気まずそうに視線をそらした。
「だから、お前はシオン殿下に騙されているんだよ! 少し考えたら分かるだろう!? どうしてお前なんかがあのシオン殿下と付き合えると思うんだよ!?」
「……ああ、そういうことね」
何を言うかと思えば、サジェスは当たり前のことを言ってきた。
「そんなの、言われなくても分かっているわ」
「だったら、どうしてっ!?」
「どうして付き合っているかって?」
シオンの悪評を消すために、恋人のふりをしていることは誰にも言えない。
「……別にいいじゃない」
「良くない!」
しっかりしろと言わんばかりにサジェスに両肩を揺すられた。その余りに真剣な表情にリナリアは驚いてしまう。
「ああ、そっか。もしかして、シオン殿下が、私を利用してケイトを狙っていると思っているの? それなら心配しなくて大丈夫よ」
「そうじゃなくて! お前、殿下にもてあそばれてんだぞ!?」
興奮したサジェスにいくら『付き合っている』と説明しても信じてもらえそうにない。
(まぁ、本当には付き合っていないからね)
リナリアはため息をつくと、サジェスが信じそうな言いわけを考え始めた。
「うーん、そうね。あそび、よ」
「はぁ!?」
怒るサジェスにリナリアは、うんうんと適当にうなずく。
「だから、私がシオン殿下にあそんでもらっているの。お互いが同意の上で付き合っているの。これでいい?」
サジェスが琥珀色の瞳を大きく見開いている。なぜか傷ついたような顔に見えるのは気のせいか。
サジェスにつかまれたリナリアの両肩にさらに力がこめられた。
「だから痛いって! 分かったら離して」
「……嫌だ」
突き飛ばされるような衝撃を感じてリナリアは目を瞑った。気がつけば、リナリアは休憩所のテーブルの上に押し倒されていた。
リナリアの両肩をつかんでいたサジェスの手は、いつの間にかリナリアの両手首を押さえつけている。
「ちょっと!? 何!?」
「何って……。お前、男にもてあそばれたいんだろ?」
リナリアに覆いかぶさるように、サジェスはグッと顔を近づけてくる。
「……だったら、シオン殿下じゃなくて、俺が相手でも良くね?」
なぜかサジェスは泣きそうな顔で、声を震わせながらそんなことを言ってきた。
「また明日ね」
「はい、また明日」
シオンを見送ろうとその場に残っていると、シオンは「私がリナリアを見送りたいから」と言って先に家に入るように言われた。
(愛し合っている婚約者同士って、きっとこんな感じなのかな?)
演技だと分かっていても、シオンに大切にされると嬉しくなってしまう。家に入ると、メイドたちが「おかえりなさいませ、お嬢様」と笑顔で出迎えてくれた。
「お嬢様、学園はどうでしたか?」
「ただいま」と返事をしたリナリアは、「今日はとっても楽しかったわ」と微笑んだ。
それから一週間、シオンとの恋人のふりは、リナリアにとって夢のように幸せな日々だった。
恋人のふりを始めた日から、変わったことがあるとすれば、シオンが毎朝リナリアの花束を贈ってくれるようになったことだ。
今朝もシオンは両手に抱えきれないほどのリナリアの花束をリナリアに手渡した。
「ありがとうございます。シオン、もしかして私の両親のマネをしているんですか?」
シオンは「どうだろうね?」と言いながらクスッと笑う。
一週間、ずっと一緒に登下校するうちに、シオンとはこれくらいの冗談は言い合えるようになっていた。
「マネでも嬉しいです」
花束は学園には持って行けないので、メイドに渡してから二人で馬車に乗り込み学園へと向かう。
馬車の中では、隣同士に座り手を繋ぐことが当たり前になっていた。シオンの美しい顔も見慣れたはずなのに、シオンの近くにいると未だにドキドキしてしまう。
(むしろ、前よりひどくなっているかも……)
心臓の音が隣のシオンに聞こえないか心配していると、シオンは「そういえば」と口を開いた。
「今日は、放課後に用事があるから、この馬車を使って先に帰ってもらえるかな?」
「え? シオンの用事が終わるまで待ちますよ」
「それはダメ。危ないから」
リナリアが「何が危ないんですか?」と聞いても、シオンはニッコリと微笑むだけだった。
「リナリア、決して一人にならないでね?」
「えっと、はい。ケイトと一緒にいるので大丈夫です」
シオンはその言葉を聞いて安心したようで「うん」と可愛くうなずいた。
(学園内で起こる危ないことってなんだろう? 最近、平和すぎて忘れてしまっていたけど、もしかして私が一人だったら、またローレルに絡まれたりでもするのかな?)
それは怖いと思い、リナリアは学園内で一人にならないように気をつけた。あっと言う間に放課後になり、教室をあとにしてケイトと一緒に馬車の待合室に向かって歩き出す。
その途中でケイトが「あ、忘れ物しちゃったわ。ちょっと待ってて、すぐに取ってくるから」と、小走りで今来た通路を戻っていった。
その背中に向かってリナリアは「急がなくていいよー」と声をかけた。シオンには『一人にならないで』と言われたが、ほんの数分くらいなら大丈夫だろうとリナリアは思った。
「おい」
背後から声をかけられ振り返ると、そこには派手な赤髪の男子生徒が腕を組みながらこちらを睨みつけている。
「サジェス……」
とっさに逃げようと走ると、すぐに追いつかれ左手首をつかまれた。
「逃げるな。お前に話がある!」
「痛いっ!? 離して!」
「うるさい、いいからこっちに来い!」
無理やり引っ張られ放課後には人気《ひとけ》がないガーデンの休憩所に連れていかれる。リナリアがサジェスの腕を振り払おうと何度も力を込めると、サジェスはようやく左手首を離してくれた。
力加減を知らないのか、サジェスにつかまれていた箇所が赤くなってしまっている。リナリアは、赤くなった左手首を自分の胸にかかえながらサジェスを睨みつけた。
「どうして私にこんなことをするの?」
「うっ」と一瞬言葉につまったサジェスは、視線をそらしながら「だから、話があるって言っただろう!」といらだっている。
「貴方が何を話したくて怒っているのか知らないけど、怒りたいのは私のほうよ! どうして嫌いな人に関わろうとするの? 私のことが嫌いなら関わらなかったらいいじゃない!」
それなのにサジェスは、事あるごとに関わってきては、リナリアを言葉で傷つける。
「そんなに、私がケイトの友達なのが気に入らないの?」
「ちがっ……! ちょっと落ち着け!」
サジェスにガシッと両肩をつかまれた。リナリアが驚いていると、サジェスは真っすぐにリナリアを睨みつけてくる。
「あのな、お前、騙されてるから!」
「は?」
意味が分からずサジェスを見ると、サジェスは気まずそうに視線をそらした。
「だから、お前はシオン殿下に騙されているんだよ! 少し考えたら分かるだろう!? どうしてお前なんかがあのシオン殿下と付き合えると思うんだよ!?」
「……ああ、そういうことね」
何を言うかと思えば、サジェスは当たり前のことを言ってきた。
「そんなの、言われなくても分かっているわ」
「だったら、どうしてっ!?」
「どうして付き合っているかって?」
シオンの悪評を消すために、恋人のふりをしていることは誰にも言えない。
「……別にいいじゃない」
「良くない!」
しっかりしろと言わんばかりにサジェスに両肩を揺すられた。その余りに真剣な表情にリナリアは驚いてしまう。
「ああ、そっか。もしかして、シオン殿下が、私を利用してケイトを狙っていると思っているの? それなら心配しなくて大丈夫よ」
「そうじゃなくて! お前、殿下にもてあそばれてんだぞ!?」
興奮したサジェスにいくら『付き合っている』と説明しても信じてもらえそうにない。
(まぁ、本当には付き合っていないからね)
リナリアはため息をつくと、サジェスが信じそうな言いわけを考え始めた。
「うーん、そうね。あそび、よ」
「はぁ!?」
怒るサジェスにリナリアは、うんうんと適当にうなずく。
「だから、私がシオン殿下にあそんでもらっているの。お互いが同意の上で付き合っているの。これでいい?」
サジェスが琥珀色の瞳を大きく見開いている。なぜか傷ついたような顔に見えるのは気のせいか。
サジェスにつかまれたリナリアの両肩にさらに力がこめられた。
「だから痛いって! 分かったら離して」
「……嫌だ」
突き飛ばされるような衝撃を感じてリナリアは目を瞑った。気がつけば、リナリアは休憩所のテーブルの上に押し倒されていた。
リナリアの両肩をつかんでいたサジェスの手は、いつの間にかリナリアの両手首を押さえつけている。
「ちょっと!? 何!?」
「何って……。お前、男にもてあそばれたいんだろ?」
リナリアに覆いかぶさるように、サジェスはグッと顔を近づけてくる。
「……だったら、シオン殿下じゃなくて、俺が相手でも良くね?」
なぜかサジェスは泣きそうな顔で、声を震わせながらそんなことを言ってきた。