罰ゲームで私はウソの告白をされるそうです~モブ令嬢なのに初恋をこじらせているヤンデレ王子に溺愛されています~
38 正直に伝えました
ローレルから解放されたリナリアは、安堵のため息をついた。ゼダはローレルの背中を見送ってから、リナリアを「大丈夫ですか?」と気遣ってくれる。
「はい、ありがとうございました」
「お礼ならシオン殿下に。私にリナリア嬢を探すように指示したのは殿下ですから」
「シオンが……」
ゼダは「シオン殿下がサロンでお待ちです」と案内してくれた。
サロンに入ると、シオンは扉の側で腕を組みながら佇んでいた。リナリアの姿を見ると慌てて側に来る。
「リナリア、大丈夫だった?」
「はい、でもどうして……?」
『どうしてシオンは、私がローレルに絡まれていると分かったのだろう?』と不思議に思っていると、いつもはサロンに入ってこないゼダが中に入り、静かに扉を閉めた。
「シオン殿下の予想通り、ローレル殿下がリナリア嬢に声をかけていました」
「やっぱり……」
そう呟いたシオンは怖いくらい冷静だった。
「ローレルが私のふりをするときは、事前に私に出歩くなって言ってくるんだ。今回は嫌な予感がしたからゼダにお願いして本当に良かったよ」
そう言いながらもシオンはゼダのほうを見ず、リナリアだけを見つめている。
「リナリア、ローレルに何かひどいことをされなかった?」
「あ、その、ローレル殿下に、私が二人の殿下を見分けることができるとバレてしまっているようです。ごめんなさい」
「どうしてリナリアが謝るの?」
「それは……前にローレル殿下に『二人の王子を見分けられたら困る』というようなことを言われたんです。だから、私、ローレル殿下に目をつけられてしまったかも……」
そうなれば、ローレルに邪魔をされてシオンの役に立つのが難しくなってしまうかもしれない。
シオンは心配そうな顔をしながら「ローレルは他に何も言っていなかった?」と聞いてきた。
「いえ、特に何も?」
シオンがゼダを見るとゼダは困った表情を浮かべた。
「ゼダ、報告を」
「はい。ローレル殿下は、リナリア嬢に『こんなに怯えて。リナリアは可愛いね』とおしゃっていました。無理やり抱きしめていましたし、その、リナリア嬢のふ、太ももに手を……」
頬を少し赤く染めながら気まずそうにゼダが報告すると、シオンの顔から表情が消えた。
「潰す」
シオンの上品な口元から、物騒な言葉が漏れた。
「シ、シオン?」
リナリアが戸惑いながら声をかけると、シオンはとたんに花がほころぶように微笑んだ。
「なぁに? リナリア」
さっきの言葉は聞き間違いなのかと思うくらいシオンは甘い声で答えてくれる。
「潰すって、何を?」
シオンはニッコリと微笑んだまま答えてくれない。側ではゼダが深いため息をついている。
「ゼダ、席を外して」
「はい」
ゼダはシオンに向かって礼儀正しく頭を下げサロンから出て行った。二人きりになるとシオンはどこか切なそうにリナリアを見つめた。
以前よりは、シオンの美しさにも慣れたつもりだったが、改めて見つめられると、紫水晶のように美しい瞳に吸い込まれてしまいそうになる。
「リナリア」
「は、はい」
何か言いたそうなシオンの表情は儚げで、つい守ってあげたくなってしまう。
「ローレルに抱きしめられたんだよね……どうだった?」
「どう、とは?」
シオンの質問の意味が分からずつい質問で返してしまう。
シオンは自分自身を抱き締めるような仕草をしながらうつむいた。
「その、ドキドキした?」
伏し目がちにそう尋ねられて、シオンの色っぽさにドキドキしてしまう。
(今、そういう状況じゃないから! 気をしっかり持って、私!!)
シオンの質問に集中するために、リナリアは目を閉じた。
「質問は、ローレル殿下に抱きしめられてドキドキしたか、ですよね?」
見えていないが正面から「うん」というシオンの声が聞こえてくる。視覚がなくなったことにより、シオンの色気には惑わされなくなったが、その代わりにシオンの声の良さが際立っている。
(シオンって声も素敵なのよね。って、違う違う!)
リナリアは、一生懸命先ほど起こったことを思い出した。ローレルに手を繋がれ、スカートの上から太ももをさわられた。その体温や感触を思い出すとゾクッと背筋に悪寒が走る。
「正直に言うと、気持ち悪かったです」
シオンからは返事がない。『聞こえなかったのかな?』と思い、リナリアはもう一度はっきりと伝えた。
「ローレル殿下にふれられると、すごく気持ち悪かったです。シオンだと大丈夫なんですけど……私、シオン以外の男性にふれられるとダメみたいです」
「シオン?」
呼びかけても返事がないので、リナリアが目を開くと、頬を真っ赤に染めたシオンと目が合った。
「……ずるいよ、リナリア」
「はい、ありがとうございました」
「お礼ならシオン殿下に。私にリナリア嬢を探すように指示したのは殿下ですから」
「シオンが……」
ゼダは「シオン殿下がサロンでお待ちです」と案内してくれた。
サロンに入ると、シオンは扉の側で腕を組みながら佇んでいた。リナリアの姿を見ると慌てて側に来る。
「リナリア、大丈夫だった?」
「はい、でもどうして……?」
『どうしてシオンは、私がローレルに絡まれていると分かったのだろう?』と不思議に思っていると、いつもはサロンに入ってこないゼダが中に入り、静かに扉を閉めた。
「シオン殿下の予想通り、ローレル殿下がリナリア嬢に声をかけていました」
「やっぱり……」
そう呟いたシオンは怖いくらい冷静だった。
「ローレルが私のふりをするときは、事前に私に出歩くなって言ってくるんだ。今回は嫌な予感がしたからゼダにお願いして本当に良かったよ」
そう言いながらもシオンはゼダのほうを見ず、リナリアだけを見つめている。
「リナリア、ローレルに何かひどいことをされなかった?」
「あ、その、ローレル殿下に、私が二人の殿下を見分けることができるとバレてしまっているようです。ごめんなさい」
「どうしてリナリアが謝るの?」
「それは……前にローレル殿下に『二人の王子を見分けられたら困る』というようなことを言われたんです。だから、私、ローレル殿下に目をつけられてしまったかも……」
そうなれば、ローレルに邪魔をされてシオンの役に立つのが難しくなってしまうかもしれない。
シオンは心配そうな顔をしながら「ローレルは他に何も言っていなかった?」と聞いてきた。
「いえ、特に何も?」
シオンがゼダを見るとゼダは困った表情を浮かべた。
「ゼダ、報告を」
「はい。ローレル殿下は、リナリア嬢に『こんなに怯えて。リナリアは可愛いね』とおしゃっていました。無理やり抱きしめていましたし、その、リナリア嬢のふ、太ももに手を……」
頬を少し赤く染めながら気まずそうにゼダが報告すると、シオンの顔から表情が消えた。
「潰す」
シオンの上品な口元から、物騒な言葉が漏れた。
「シ、シオン?」
リナリアが戸惑いながら声をかけると、シオンはとたんに花がほころぶように微笑んだ。
「なぁに? リナリア」
さっきの言葉は聞き間違いなのかと思うくらいシオンは甘い声で答えてくれる。
「潰すって、何を?」
シオンはニッコリと微笑んだまま答えてくれない。側ではゼダが深いため息をついている。
「ゼダ、席を外して」
「はい」
ゼダはシオンに向かって礼儀正しく頭を下げサロンから出て行った。二人きりになるとシオンはどこか切なそうにリナリアを見つめた。
以前よりは、シオンの美しさにも慣れたつもりだったが、改めて見つめられると、紫水晶のように美しい瞳に吸い込まれてしまいそうになる。
「リナリア」
「は、はい」
何か言いたそうなシオンの表情は儚げで、つい守ってあげたくなってしまう。
「ローレルに抱きしめられたんだよね……どうだった?」
「どう、とは?」
シオンの質問の意味が分からずつい質問で返してしまう。
シオンは自分自身を抱き締めるような仕草をしながらうつむいた。
「その、ドキドキした?」
伏し目がちにそう尋ねられて、シオンの色っぽさにドキドキしてしまう。
(今、そういう状況じゃないから! 気をしっかり持って、私!!)
シオンの質問に集中するために、リナリアは目を閉じた。
「質問は、ローレル殿下に抱きしめられてドキドキしたか、ですよね?」
見えていないが正面から「うん」というシオンの声が聞こえてくる。視覚がなくなったことにより、シオンの色気には惑わされなくなったが、その代わりにシオンの声の良さが際立っている。
(シオンって声も素敵なのよね。って、違う違う!)
リナリアは、一生懸命先ほど起こったことを思い出した。ローレルに手を繋がれ、スカートの上から太ももをさわられた。その体温や感触を思い出すとゾクッと背筋に悪寒が走る。
「正直に言うと、気持ち悪かったです」
シオンからは返事がない。『聞こえなかったのかな?』と思い、リナリアはもう一度はっきりと伝えた。
「ローレル殿下にふれられると、すごく気持ち悪かったです。シオンだと大丈夫なんですけど……私、シオン以外の男性にふれられるとダメみたいです」
「シオン?」
呼びかけても返事がないので、リナリアが目を開くと、頬を真っ赤に染めたシオンと目が合った。
「……ずるいよ、リナリア」