罰ゲームで私はウソの告白をされるそうです~モブ令嬢なのに初恋をこじらせているヤンデレ王子に溺愛されています~
04 罰ゲームがおいしすぎます
次の日、授業が全て終わるとシオンの護衛ゼダがリナリアを迎えに来た。
授業後に家から馬車がお迎えに来てくれるのを待っているこの時間は、これまでは友達のケイトとの楽しいおしゃべりの時間だった。
ケイトには、サジェスのこともあり事情を説明できないので「しばらくの間、用事があっておしゃべりができないの」と誤魔化したが、迎えに来たゼダを見たケイトは白い頬をピンク色に染めながら「私のことは気にしないで! 恋人たちのお邪魔はしないわ」と瞳を輝かせた。どうやら、リナリアとゼダが恋仲だと誤解をしたようだ。
(誤解されているゼダ様には申し訳ないけど、ケイトは他の人に言いふらすような子じゃないから大丈夫よね?)
どうせシオン王子との密会は、罰ゲームが終わるまでの短い間なのだ。今だって、ゼダのあとをついていくと、シオンの代わりにサジェスたちがいて「お前なんかが、シオン殿下に相手をしてもらえると思っているのかよ!」とバカにされる可能性もある。
それを覚悟した上で、リナリアはゼダのあとについていった。
(サジェスにバカにされてもいいわ。こっちは何年シオン殿下のファンをやっていると思っているの!?)
ゼダに案内されたのは、学園内の一室だった。教室ではなくサロンとでもいうのか、王族や上位貴族だけが使える部屋のようだ。
扉を開けたゼダは、無言で中に入るように促す。
「失礼します」
リナリアが部屋の中に入ると、優しい笑みを浮かべたシオンが小さく手を振った。今日のシオンのネクタイは、昨日とは違いシオンの学年の色だった。
シオンはわざわざ立ち上がってリナリアを出迎えてくれる。ゼダはというと、静かに扉を閉めていた。きっとリナリアとシオンの話が終わるまで、扉の前に控えているのだろう。
ソファーに座るようにエスコートされたので、リナリアは大人しくソファーに座った。部屋の中を見渡しても、サジェスや他の男子生徒が隠れているような気配はない。
(罰ゲームのネタバレは、今日ではないみたいね)
そんなことを考えていると、シオンがテーブルの上に用意されていたお茶を飲むように進めてくれた。お礼を言ってカップに口をつけると、芳醇な香りが口内に広がる。
「美味しいです」
素直な感想を伝えると、シオンは柔らかく微笑んだ。
「良かったです。頑張って練習したかいがありました」
「練習、ですか? もしかして、このお茶……殿下が淹れてくださった?」
そんなまさかと思いながら尋ねると、シオンは「そうです」と頷いた。
この学園内では、例え貴族であっても自分のことは自分でするように義務付けられている。しかし、王族は別だ。学園内でも、ゼダのように護衛がついているし、メイドだってついているはずだ。
リナリアが驚きすぎてシオンを無言で見つめていると、シオンは少し照れるようにうつむいた。
「どうしても、貴女と二人きりになりたくて、頑張ってしまいました」
シオンの伏せた瞳や、僅かに赤くなっている頬。そのどれもが壮絶な色気を放っている。
(な、に? シオン殿下は、どうしてこんなに色っぽいの!?)
遠くから見ている時は、そんなことを考えたこともなかった。しかし、近くで見るととにかく男の色気がただ漏れている。絶対そんなことはありえないのに、怪しく誘われているような気さえしてくる。
(う、何か見てはいけないものを見ているような気になってきたわ……。もしかすると、シオン殿下が色っぽいのではなく、私が殿下をいかがわしい目で見てしまっているのかもしれない)
リナリアは、『シオン殿下、嫌らしい目で見てごめんなさい』と心の中で深く反省した。
そのあとは、シオンと穏やかに会話をしたが、リナリアはずっと夢見心地であまり内容を覚えていない。
あっと言う間に時間がたってしまい、分かれる際に、シオンは「少し失礼」と断ったあとにリナリアの左腕を優しくつかんだ。そして、リナリアの手のひらに軽くキスをする。
「!?」
リナリアが驚きすぎて固まっていると、シオンはリナリアの瞳を覗き込んだ。
「手のひらへのキスの意味、知っていますか?」
リナリアが小さく首を振ると、シオンは「そうですか、残念です」と寂しそうな笑みを浮かべる。
シオンと別れたリナリアは、動揺しすぎて自分がどうやって馬車に乗り込んだのか覚えていなかった。家につくと、すぐに本棚を漁って『手のひらへのキス』について調べたが、そんなことが書かれている本は持っていない。
仕方がないので、ダメもとでメイドに尋ねると、メイドは楽しそうに教えてくれた。
「手のひらへのキスって、ときどき物語や舞台でありますよねぇ。あれって素敵でうっとりしてしまいます。これが正式かどうかは分かりませんが、意味は確か『求愛』だった気がしますよ。他にも『懇願』とか『独占欲』とも言われることがあるみたいですね」
メイドは「求められてるって感じがして素敵ですよねぇ」とうっとりしている。
(シオン殿下が、私を求めている……?)
こんなに幸せな嫌がらせがあっていいのだろうか? 例え罰ゲームでも、シオンがここまでする必要があるとは思えない。
(殿下、これはさすがにやりすぎです!)
リナリアは、ときめきすぎて苦しくなってしまった自身の胸に手を当てた。
授業後に家から馬車がお迎えに来てくれるのを待っているこの時間は、これまでは友達のケイトとの楽しいおしゃべりの時間だった。
ケイトには、サジェスのこともあり事情を説明できないので「しばらくの間、用事があっておしゃべりができないの」と誤魔化したが、迎えに来たゼダを見たケイトは白い頬をピンク色に染めながら「私のことは気にしないで! 恋人たちのお邪魔はしないわ」と瞳を輝かせた。どうやら、リナリアとゼダが恋仲だと誤解をしたようだ。
(誤解されているゼダ様には申し訳ないけど、ケイトは他の人に言いふらすような子じゃないから大丈夫よね?)
どうせシオン王子との密会は、罰ゲームが終わるまでの短い間なのだ。今だって、ゼダのあとをついていくと、シオンの代わりにサジェスたちがいて「お前なんかが、シオン殿下に相手をしてもらえると思っているのかよ!」とバカにされる可能性もある。
それを覚悟した上で、リナリアはゼダのあとについていった。
(サジェスにバカにされてもいいわ。こっちは何年シオン殿下のファンをやっていると思っているの!?)
ゼダに案内されたのは、学園内の一室だった。教室ではなくサロンとでもいうのか、王族や上位貴族だけが使える部屋のようだ。
扉を開けたゼダは、無言で中に入るように促す。
「失礼します」
リナリアが部屋の中に入ると、優しい笑みを浮かべたシオンが小さく手を振った。今日のシオンのネクタイは、昨日とは違いシオンの学年の色だった。
シオンはわざわざ立ち上がってリナリアを出迎えてくれる。ゼダはというと、静かに扉を閉めていた。きっとリナリアとシオンの話が終わるまで、扉の前に控えているのだろう。
ソファーに座るようにエスコートされたので、リナリアは大人しくソファーに座った。部屋の中を見渡しても、サジェスや他の男子生徒が隠れているような気配はない。
(罰ゲームのネタバレは、今日ではないみたいね)
そんなことを考えていると、シオンがテーブルの上に用意されていたお茶を飲むように進めてくれた。お礼を言ってカップに口をつけると、芳醇な香りが口内に広がる。
「美味しいです」
素直な感想を伝えると、シオンは柔らかく微笑んだ。
「良かったです。頑張って練習したかいがありました」
「練習、ですか? もしかして、このお茶……殿下が淹れてくださった?」
そんなまさかと思いながら尋ねると、シオンは「そうです」と頷いた。
この学園内では、例え貴族であっても自分のことは自分でするように義務付けられている。しかし、王族は別だ。学園内でも、ゼダのように護衛がついているし、メイドだってついているはずだ。
リナリアが驚きすぎてシオンを無言で見つめていると、シオンは少し照れるようにうつむいた。
「どうしても、貴女と二人きりになりたくて、頑張ってしまいました」
シオンの伏せた瞳や、僅かに赤くなっている頬。そのどれもが壮絶な色気を放っている。
(な、に? シオン殿下は、どうしてこんなに色っぽいの!?)
遠くから見ている時は、そんなことを考えたこともなかった。しかし、近くで見るととにかく男の色気がただ漏れている。絶対そんなことはありえないのに、怪しく誘われているような気さえしてくる。
(う、何か見てはいけないものを見ているような気になってきたわ……。もしかすると、シオン殿下が色っぽいのではなく、私が殿下をいかがわしい目で見てしまっているのかもしれない)
リナリアは、『シオン殿下、嫌らしい目で見てごめんなさい』と心の中で深く反省した。
そのあとは、シオンと穏やかに会話をしたが、リナリアはずっと夢見心地であまり内容を覚えていない。
あっと言う間に時間がたってしまい、分かれる際に、シオンは「少し失礼」と断ったあとにリナリアの左腕を優しくつかんだ。そして、リナリアの手のひらに軽くキスをする。
「!?」
リナリアが驚きすぎて固まっていると、シオンはリナリアの瞳を覗き込んだ。
「手のひらへのキスの意味、知っていますか?」
リナリアが小さく首を振ると、シオンは「そうですか、残念です」と寂しそうな笑みを浮かべる。
シオンと別れたリナリアは、動揺しすぎて自分がどうやって馬車に乗り込んだのか覚えていなかった。家につくと、すぐに本棚を漁って『手のひらへのキス』について調べたが、そんなことが書かれている本は持っていない。
仕方がないので、ダメもとでメイドに尋ねると、メイドは楽しそうに教えてくれた。
「手のひらへのキスって、ときどき物語や舞台でありますよねぇ。あれって素敵でうっとりしてしまいます。これが正式かどうかは分かりませんが、意味は確か『求愛』だった気がしますよ。他にも『懇願』とか『独占欲』とも言われることがあるみたいですね」
メイドは「求められてるって感じがして素敵ですよねぇ」とうっとりしている。
(シオン殿下が、私を求めている……?)
こんなに幸せな嫌がらせがあっていいのだろうか? 例え罰ゲームでも、シオンがここまでする必要があるとは思えない。
(殿下、これはさすがにやりすぎです!)
リナリアは、ときめきすぎて苦しくなってしまった自身の胸に手を当てた。