罰ゲームで私はウソの告白をされるそうです~モブ令嬢なのに初恋をこじらせているヤンデレ王子に溺愛されています~
07 すみません、それは知りませんでした
馬車の中で待っていた人物を見て、リナリアは我が目を疑った。
「……シオン殿下?」
そこには先ほどサロンで別れたシオンが座っている。シオンはニッコリと微笑んだが、その瞳はなぜか笑っていないように見えた。
「待っていたよ、リナリア」
シオンは「馬車が動くと危ないから、とりあえず座って」と向かいの席に座るように言ってきた。リナリアは言われるがままに座ったあとに、もう一度シオンを見た。
「殿下、どうしてここに?」
その言葉に、シオンは悲しそうに眉を下げる。
「どうしてって、君に会いたいから、必ず会える場所でこうして待っていたんだ」
シオンは、まるで恋人に向けるような切なそうな視線をリナリアに向けた。
「殿下、もう演技はやめてください。私は全て知っています。知らない振りをしていたのは謝ります。だからもう、これ以上は……」
これまでは夢見心地で楽しんでいたが、現実に気がついてしまうと自分がみじめで仕方ない。
シオンは「ごめんね。まさかリナリアに知られているなんて思わなくて」と言いながらため息をついた。
「いつ知ったの?」
「初めから知っていました。偶然、聞いてしまって……」
サジェスたちがカードゲームをしている場に出くわしたのは本当に偶然だった。そのときに罰ゲームのことを知った。
「驚いたよね?」
「まぁ、それはそうですね」
シオンはまた深いため息をついた。
「本当にごめん」
「もう良いんです」
「ダメだよ。だって、君が入学してからずっと私に見守られていたなんて驚いたでしょう?」
(……ん? 見守る?)
シオンの口から出た予想外の言葉に驚いていると、シオンはさらに言葉を続ける。
「見守ると言っても、もちろんリナリアのプライベートは覗いていないよ。ただ、学園での君の生活が気になってね。君は可愛らしい上に社交的だから、私以外の男とも話すことがあるでしょう? それがどうしても、気になって気になって気になり過ぎて仕方なかったんだ」
何度も『気になって』を繰り返すシオンの瞳は、少し瞳孔が開いているように見えた。
「私はリナリアに会ったときから、ずっと君だけを愛しているのに、君は伯爵家の跡取りで王族の婚約者になれないし、なる気すらないんだもの。そのせいか一緒の学園にいるのに、近づいてきてさえくれない。私が今までどれほど焦(じ)らされていたか」
シオンは自身の胸元を握りしめると、苦しそうにハァと熱い息を吐く。その色っぽさは、もはや18禁だ。
「こんなに君に恋焦がれて苦しむ私を知りながら、今まで知らないふりをしていたなんて……君は悪いこだね」
頬を赤く染めてうっとりと囁くシオンを見て、リナリアは頭が真っ白になった。
「あの……殿下」
「なぁに?」
「殿下、それは、知りませんでした」
きょとんとしたシオンは「え?」と呟く。
「あの、私が言ったことは、殿下がカードゲームに負けてその罰ゲームとして私をウソで口説いていると知っている、ということだけです。だから、殿下が私を見守っていたとか、殿下が私のことをずっと好きだとか……えっ? 殿下って私のこと、好きなんですか?」
リナリアが自分の言葉に驚きながら尋ねると、シオンはカァと顔を赤くした。
「ほ、本当に? いつからですか?」
シオンは赤面したまま、「子どもの頃、初めてお茶会で会ったときから」と教えてくれる。
「あ、私もあの時から殿下の大ファンです」
「ファン?」
スゥッとシオンの瞳が細くなった。
「リナリアは、私の、ただのファン?」
「はい、だって私なんかが、殿下とお近づきになるなんておこがましいですから。だから、罰ゲームとはいえ、今まで良い夢を見せてもらいました。ありがとうございました」
リナリアが頭を下げてから顔を上げると、目の前にシオンの顔があった。小さく悲鳴をあげて後ろに下がろうとしたが狭い馬車の中では逃げる場所がない。
「ねぇリナリア。これは罰ゲームじゃないよ」
信じられないその言葉に、リナリアは美しいシオンの顔をマジマジと見つめた。
「殿下、カードゲームで負けたから罰ゲームで私を口説いていたのですよね?」
「そんな愚かなこと、大切なリナリアにするわけがないよ」
「でも、今までのことが罰ゲームではなかったとしたら、タイミングが良すぎます。殿下に呼び出された場所もカードゲームをしていたところと同じでした」
シオンは「偶然が重なったようだね」と微笑んでいる。
「全て偶然? 私の勘違い……じゃあ、今までのことは?」
手の甲へのキスから始まり、手のひらや髪へのキス。壁ドンから愛の告白までいろいろあった。
「もちろん、私の素直な気持ちだよ。そっか、リナリアは、今までのことは全て罰ゲームだと思っていたんだね。……ふーん、よく分かったよ」
「えっと、あの、その」
「私の愛は少しも伝わっていなかったようだから、明日からはもっと頑張らないとね」
シオンは優しく微笑んでいるはずなのに、リナリアはなぜかゾクッと寒気がした。
「……シオン殿下?」
そこには先ほどサロンで別れたシオンが座っている。シオンはニッコリと微笑んだが、その瞳はなぜか笑っていないように見えた。
「待っていたよ、リナリア」
シオンは「馬車が動くと危ないから、とりあえず座って」と向かいの席に座るように言ってきた。リナリアは言われるがままに座ったあとに、もう一度シオンを見た。
「殿下、どうしてここに?」
その言葉に、シオンは悲しそうに眉を下げる。
「どうしてって、君に会いたいから、必ず会える場所でこうして待っていたんだ」
シオンは、まるで恋人に向けるような切なそうな視線をリナリアに向けた。
「殿下、もう演技はやめてください。私は全て知っています。知らない振りをしていたのは謝ります。だからもう、これ以上は……」
これまでは夢見心地で楽しんでいたが、現実に気がついてしまうと自分がみじめで仕方ない。
シオンは「ごめんね。まさかリナリアに知られているなんて思わなくて」と言いながらため息をついた。
「いつ知ったの?」
「初めから知っていました。偶然、聞いてしまって……」
サジェスたちがカードゲームをしている場に出くわしたのは本当に偶然だった。そのときに罰ゲームのことを知った。
「驚いたよね?」
「まぁ、それはそうですね」
シオンはまた深いため息をついた。
「本当にごめん」
「もう良いんです」
「ダメだよ。だって、君が入学してからずっと私に見守られていたなんて驚いたでしょう?」
(……ん? 見守る?)
シオンの口から出た予想外の言葉に驚いていると、シオンはさらに言葉を続ける。
「見守ると言っても、もちろんリナリアのプライベートは覗いていないよ。ただ、学園での君の生活が気になってね。君は可愛らしい上に社交的だから、私以外の男とも話すことがあるでしょう? それがどうしても、気になって気になって気になり過ぎて仕方なかったんだ」
何度も『気になって』を繰り返すシオンの瞳は、少し瞳孔が開いているように見えた。
「私はリナリアに会ったときから、ずっと君だけを愛しているのに、君は伯爵家の跡取りで王族の婚約者になれないし、なる気すらないんだもの。そのせいか一緒の学園にいるのに、近づいてきてさえくれない。私が今までどれほど焦(じ)らされていたか」
シオンは自身の胸元を握りしめると、苦しそうにハァと熱い息を吐く。その色っぽさは、もはや18禁だ。
「こんなに君に恋焦がれて苦しむ私を知りながら、今まで知らないふりをしていたなんて……君は悪いこだね」
頬を赤く染めてうっとりと囁くシオンを見て、リナリアは頭が真っ白になった。
「あの……殿下」
「なぁに?」
「殿下、それは、知りませんでした」
きょとんとしたシオンは「え?」と呟く。
「あの、私が言ったことは、殿下がカードゲームに負けてその罰ゲームとして私をウソで口説いていると知っている、ということだけです。だから、殿下が私を見守っていたとか、殿下が私のことをずっと好きだとか……えっ? 殿下って私のこと、好きなんですか?」
リナリアが自分の言葉に驚きながら尋ねると、シオンはカァと顔を赤くした。
「ほ、本当に? いつからですか?」
シオンは赤面したまま、「子どもの頃、初めてお茶会で会ったときから」と教えてくれる。
「あ、私もあの時から殿下の大ファンです」
「ファン?」
スゥッとシオンの瞳が細くなった。
「リナリアは、私の、ただのファン?」
「はい、だって私なんかが、殿下とお近づきになるなんておこがましいですから。だから、罰ゲームとはいえ、今まで良い夢を見せてもらいました。ありがとうございました」
リナリアが頭を下げてから顔を上げると、目の前にシオンの顔があった。小さく悲鳴をあげて後ろに下がろうとしたが狭い馬車の中では逃げる場所がない。
「ねぇリナリア。これは罰ゲームじゃないよ」
信じられないその言葉に、リナリアは美しいシオンの顔をマジマジと見つめた。
「殿下、カードゲームで負けたから罰ゲームで私を口説いていたのですよね?」
「そんな愚かなこと、大切なリナリアにするわけがないよ」
「でも、今までのことが罰ゲームではなかったとしたら、タイミングが良すぎます。殿下に呼び出された場所もカードゲームをしていたところと同じでした」
シオンは「偶然が重なったようだね」と微笑んでいる。
「全て偶然? 私の勘違い……じゃあ、今までのことは?」
手の甲へのキスから始まり、手のひらや髪へのキス。壁ドンから愛の告白までいろいろあった。
「もちろん、私の素直な気持ちだよ。そっか、リナリアは、今までのことは全て罰ゲームだと思っていたんだね。……ふーん、よく分かったよ」
「えっと、あの、その」
「私の愛は少しも伝わっていなかったようだから、明日からはもっと頑張らないとね」
シオンは優しく微笑んでいるはずなのに、リナリアはなぜかゾクッと寒気がした。