主役になれないお姫さま

冷たくなった元カレ

昨日は一馬さんのマンションでデリバリーを頼み夕飯を食べた後、車で自宅まで送ってもらった。
近いので一人で帰れると伝えたのだが、彼に借りた部屋着でも着てきたワンピースでも外には出難いだろうとの配慮だった。

ふとした瞬間に一真さんと過ごした甘い時間を思い出して笑顔になっている自分に気づく。気持ちを切り替えるため、きっちりと髪の毛を束ね、仕事用の服をチョイスする。

今日から一週間、また、佐々木先輩と顔を合わせなければならないのかと思うと憂鬱になる。
新婚旅行は沙織ちゃんが出産を終えてから国内で予定していると話していたのを偶然耳にしたことがあった。

職場は自宅の最寄駅から二駅と近い。
ここのマンションを選んだ理由はオートロックがある事と会社から近いことだ。
おかげで毎日充分な睡眠時間が確保され、ギリギリまで寝ていられた。だから佐々木先輩も残業が続くときは自宅より近いからと泊まりに来ることもあった。

 私と別れずにいたのは、ただ色々と都合が良かっただけなのかもね…。

ずっと心の奥底に積もっていたものを昨日全て吐き出してしまったせいか冷静にそんな風に思えるようになっていた。一真さんのおかげでやっと気持ちが整理され吹っ切れたようだった。

会社に着いて身支度を済ませると、駅前のカフェで買ったホットコーヒーをペン立ての横に置き、PCを起動して営業部内のメンバーの予定を確認する。
全てオンラインで管理されており、外出先からでも予定の変更が行えるのでリアルタイムでメンバー全員の予定が把握できた。
休日明けは予定が変更されることが多いので必ず出社して1番最初に確認をするようにしていた。

 あれ?
 10時から営業部全体の予定が新しく登録されてる。
 場所は一番広い第一会議室だ。

「部長、10時から何かあるんですか?」

のんびりと自席でお茶を飲む部長に朝の挨拶と共に質問した。

「あぁ、会社から人事について報告があるようだ。さっき副社長から内線があったんだ。可能な限り参加するように皆に伝えておいてくれ。」

思い出したかのように部長は軽く答えた。

「はい、承知しました。」

開始時刻が10時と出社時間から近いので、念のため営業部のグループチャットでも周知すると、「めんどくさーい!」だの「突然の人事報告っていったい!?」だのチャット内で少しだけざわついていたが詳細を知る人は誰もいなかった。
< 8 / 53 >

この作品をシェア

pagetop