一夜限りのお相手が溺愛先生へと変貌しました
15. 溺愛は永遠に
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チャペルの大きな扉前で、ブーケを持ち出番を待っている繭。
その胸は徐々に鼓動を速くしていき、抑え込もうとすると余計に歯止めがきかなくなった。
ベールダウンしていて外部には伝わりにくいが、適温の外気にも関わらず手足の先が冷えてしまい、表情はガチガチに固まっている。
そんな異変に気がついたのは、繭より先頭にスタンバイする、三歳の咲だった。
「ママ、こわいの?」
「え?……怖くないよ?」
「じゃあ、たのしい?」
「っ……」
心配そうに見つめてくる娘に、繭はハッと気付かされた。
この扉が開いたら、繭と椿を祝福しようと集まってくれた、家族友人同僚……大切な人達がいる。
その一つ一つのお祝いの気持ちに応えるよう、こちらも笑顔を向けなければ、皆が咲のように心配してしまうと思い直した。
「……咲、ありがとう」
「あ、ママやっとわらった!」
「うん、咲のおかげで元気出た〜!」
「よかった、もうすぐパパにあえるからあんしんしてね!」
きっと咲なりに、繭は椿がいなくて心細いんだと解釈したらしく、もうすぐ大好きな椿に会える事を教えてくれた。
三歳になった娘に、少しでも記憶に残る結婚式を挙げたいと考えていた繭。
しかし実際は咲の存在が繭を勇気づけ、全力で励ましてくれる。
誰も教えていないのに、子供というのはいつの間にか色んな事が出来るようになっていて、母としては毎回驚きの連続。
「さきも、りくとあそぶとたのしいからすきなの」
「いつも仲良く遊んでいるもんね」
「だからパパのことすきなママのきもちわかるよ!」
「え?」
「さきはママのみかただから」
「……咲」
まだ恋バナというには早い気がするも、それを予感をさせる優しくてちょっぴりませている娘に、緊張をほぐしてもらった。