愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
今、キスが必要ですか?


日本から飛行機でおよそ十三時間、南は碧唯とともにイタリアのローマにやって来た。

羽田をお昼近くに発ったため、到着は夜の七時近く。そのまま碧唯が暮らすアパートメントに向かった。

彼の部屋は、かの有名なスペイン広場から歩いてすぐの場所にある。市内の中心部であり、ショッピングにはもってこいのコンドッティ通りも遠くないという。
パーティーでの役目を終えれば、観光やショッピングが楽しめそうだと密かにワクワクする。彼の勤め先である日本大使館も徒歩圏内らしい。


「映画のワンシーンに登場しそうな街並みを毎日歩いているなんて羨ましいな」
「珍しいのは最初だけ。すぐに見慣れた景色になるものだ」
「すっかりローマの人だね」


微かに覚えるジェラシーを持て余し、思わず湿気を含んだ眼差しを送った。

タクシーで到着したアパートメントはヨーロピアン調の外観に風格があり、小規模な美術館のよう。中に足を踏み入れると、内装にも細部にわたって繊細で美しい装飾が施されている。
碧唯が南のキャリーケースを引いてくれているおかげで身軽なため、ついあちこちに視線と足が彷徨う。
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