貴方と私は秘密の✕✕ 〜地味系女子はハイスペ王子に夜の指南を所望される〜

そしてハッピーエンド(その後の二人)

 本日週末、金曜日。
 勝手知ったる神山透の自宅リビングで寛ぎ中の私である。
「ちょっと調べ物だけ、いいですか?」
 仕事関係の何かを自宅に持ち帰って来た様子のイケメンは、着替えもそこそこにノートパソコンで作業をし始めている。
 作業の邪魔をしてはまずかろう。その傍らで大人しく、帰り道コンビニで購入したドリップのアイスコーヒーを片手に雑誌をペラペラめくって眺めてみる。新作の服を買うわけでもないのに、発売される度につい買ってしまうファッション誌の今月の巻頭特集は『コレが私の運命♡ジュエリー特集』。

 運命だなんて大げさだなぁ……と思いつつ読んでいくと一枚のネックレスの写真が目に留まる。
 プラチナの繊細なチェーンに六本の爪の石座で留められた小さな、けれど確かに煌めく一粒のラウンド型のダイヤモンド。チェーンとチャームをつなぐバチカンが短く控えめなところも好ましい。
 背景が黒いせいだろうか。石のカットの様子と光が当たって輝く様が詳細に見て取れて、写真ながらもいつまでも魅入ってしまう魔法のような引力がある。
 特にアクセサリーに興味があるというわけではないけれど、これには何故か心惹かれてしまう。
 ……いやいや待て待て。先ずは一旦落ち着こう。
 ストローを口へと運びコーヒーを一口ゴクリと飲み込んでから再度ページを眺めてみるが、やっぱり色々掲載されている中でもあのネックレスだけが特別輝いて見える。
 ダイヤモンドだけあって、お値段はそこそこお高いものである。けれど、数ヶ月節約生活を送っていれば買えないこともない範囲でもある。
 どうしよう。買える……買えてしまえる。
 
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