貴方と私は秘密の✕✕ 〜地味系女子はハイスペ王子に夜の指南を所望される〜

ルームナンバー319

そしてそれから何巡目か逢瀬を重ねたある日の金曜日。
本日通算何度目かの「一回目の何もしないデー」。

12時のベルが鳴ると同時に会社の最寄りのコンビニまで、最近のお気に入りの「レタスたっぷりサンドイッチ」でも買いに行こうかと私は財布片手に勢いよく席を立つのだった。
瑞々しいレタスが何層にも重なるその食感に、週3ペースで選んでしまう自信があるこの人気商品。正午の入荷と同時に売り切れる場合もあることから、毎度名のしれぬの相手との真剣バトルを密かに繰り広げている私なのである。

副菜は何にしようかなと考えながら、戦いに備え足早にホールまで歩を進めると、丁度1階に向かうエレベーターの扉が開いている。
こりゃ本日は幸先が良いぞとばかりに乗り込んでみると、その中には先客が一人。
エレベーター内に他人と二人きりってなんだか少し気まずくなるよねと、相手の顔も見ぬままツツと邪魔にならないよう端に寄ってみると、相手も何故かこちらに近づいてくる。
この空間に二人きりなのに、なんで寄って来るのだろう?
警戒感も露わに身を固くしていると、

「山本さん、ランチにお出かけですか?」

耳に響くのは、聞き馴染みのある穏やかな声。
パッと相手の顔を確認すれば、隣にいたのは仕事モードの澄まし顔で前を向く、神山透なのだった。

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