俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
第一章 私を抱いてください
結婚行進曲 

第一章 私を抱いてください
 
 鳴り響くウエディングベル。

 秋晴れの空を舞う、美しい白いブーケ。

 人生の最高の一日を切り取った一場面。

 そんななか、私、飛鳥未央奈(あすかみおな)は、最低の気分で最上級の作り笑顔を浮かべ立っていた。

 自分を裏切った男と、彼氏を奪った後輩の結婚式なのだから、笑顔で立っているだけでもほめてもらいたいくらいだ。

 そのうえ――。投げられたブーケが見事、私の目の前に飛んできた。

 一瞬「無視してしまおう」か……という考えが頭をよぎったが、そんなことすれば余計に注目を浴びかねない。

 ただでさえ事情を知る数名は、私に哀れみの視線を向けてきている。

――バサッ。

 投げた本人の悪意の塊のようなブーケが、今、手の中にある。

 新郎と新婦が「あはは」と声をあげて笑っているのを目の端でとらえた。

 私そんなに、悪いことした?

 裏切ったのは男の方だ。奪った女は勝ち誇った顔で結婚式に招待してきた。

 どこからどう見ても自分が被害者なのに、なぜこんな二次被害を受けなくてはいけないのだろうか。

 祝福なんて胸の中にひとかけらもない。その代わり悔しさが胸いっぱいに渦巻いている。

 こんな思いをしてまで、ここにいる理由はただ「負けたくない」という理由だけだ。

 私のいいところでもあり、悪いところでもある〝負けず嫌い〟の性格がこんな場面でも如何なく発揮されている。

 腹立たしさを奥歯をかみしめることで耐え、変わりに顔を上げて極上の笑みを浮かべ周囲に見せつけた。

 そんな私のもとに、事情を知らない司会者がやってきてマイクを向けた。

「ぜひご感想をお聞かせください」

 ちらっと花嫁の方を見ると笑顔を浮かべてこちらを見ている。

 これまで何をされても相手にしなかったことで、私に対する嫌がらせがエスカレートしてきている。

 あの様子を見ているとブーケもわざとこちらに投げてきたようだ。

 これまでなぜ私がだまってきたと思う? 何事もタイミングが大切なのよ。

 私は意味ありげに新郎新婦に笑みを向け、口を開いた。

「おふたりとも、ご結婚おめでとうございます。ふたりの幸せそうな顔を見ていると私も自然と笑顔になります。私、ちょうどゴミみたいな浮気癖のある彼氏と別れたばかりなので次こそは幸せになりますね」
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