断る――――前にもそう言ったはずだ

3.ダンスと社交辞令

「モニカは女官志望だったな」


 二人きりになってすぐ、エルネストはそう尋ねてきた。モニカは内心ビクつきつつ、「そうです」と答える。


「それは何故?」

「宰相として働く父の背中を見てきましたから――――わたくしにも、国のためにできることがあれば、と思いまして」


 他の誰かに対してならば胸を張って口にできる想いでも、エルネストに対しては酷く臆病になってしまう。
 エルネストは「そうか」と短く相槌を打ち、まじまじとモニカを見下ろした。


「そういう考えなら『女官』という形でなくとも叶うな」

「それは…………どういう意味でしょうか?」


 彼の真意を測りかね、モニカは小さく首を傾げる。


(女官という形でなくとも叶う?)


 単に『国のためになる仕事は他にも存在する』と言いたいのか、考えが浅いことを指摘したいのか。

 エルネストと長く会話をするのは怖いが、いつまでもビクビクしているわけにはいかない。モニカは凛と背筋を伸ばし、エルネストを見つめた。


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