断る――――前にもそう言ったはずだ

4.君は僕の妃になるんだ

「君をエルネストの妃に、と考えているんだ」


 はじめて目にする国王陛下――――エルネストの父親は、モニカに向かってそう言った。
 隣にはエルネストと、彼の母親が並んでいる。今日も今日とて、彼の表情は冷たいままだ。


(え? わたくしをエルネスト様の妃に? ……本気で?)


 モニカは本当は、声を大にしてそう言いたかった。思い切り首を傾げたかった。
 けれど、相手はこの国の最高権力者。モニカは驚きに目を見開き、己の父親を見ることしかできない。

 しかし、事前に話を聞いていたのだろう。モニカの父親は平然としていた。


「君が驚くのも無理はない。けれど、我々としてはすぐに婚約、出来る限り早く結婚という具合に進めていきたいと考えている」


 国王が言う。
 彼は冒頭で『妃にと考えている』と言ったが、こうして呼び出しを受けている時点で、モニカに断るという選択肢はない。彼女の心境はとても複雑だった。


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