断る――――前にもそう言ったはずだ

5.結婚とエルネストの笑み

 二人の結婚式は、異例の早さで執り行われることになった。

 ドレスやブーケ、アクセサリーの準備や、式典の段取り、招待客の把握等に加え、数ヶ月にギュッと圧縮された妃教育。毎日、目まぐるしい勢いで準備が進められていく。

 多忙なモニカのために、早速専属侍女が付けられた。
 名前をジュリーといい、穏やかでとても気がきく。既に子供が成人しており、子育ての面でもモニカをサポートできるようにとの配慮である。


「貴女の淹れてくれるお茶が一番美味しいと思うわ」

「あらあら。そんなに褒めても何も出ませんよ、モニカ様」


 格式張った城の中でも、彼女と一緒にいれば、温かな家庭的な雰囲気を味わうことができる。この上ジュリーは、その場の雰囲気に合わせた応対ができるため、モニカはとても心強かった。


「さあ、モニカ様。そろそろシャンとなさってください。殿下がいらっしゃる時間ですよ」

「……そうだったわね」


 どういうわけか、エルネストは毎日モニカの休憩に合わせ、彼女の様子を覗きに来る。二人の間に大した会話はないのだが、それでも来れば応対をしなければならない。
 緩んだ気持ちを引き締めて、モニカは背筋を凛と伸ばした。



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