断る――――前にもそう言ったはずだ

8.モニカの想い、エルネストの想い

 朝食を終えると、モニカとエルネストはそれぞれの執務室へと移動する。
 執務室の隣にはモニカの私室があり、お茶をしたり、個人的な客をもてなしたり、ゆったりと過ごすことが出来るようになっていた。


「お待たせいたしました、妃殿下」

「毎日ありがとうね、コゼット」


 モニカは仕事の前にここに立ち寄り、一人きりでお茶を飲む。エルネストとの朝食で疲弊し、あまり元気のない彼女を想い、侍女たちが提案してくれたことだ。

 王太子妃となったモニカは毎日沢山の人に囲まれ、一人になる機会が極端に少ない。
 このためこの時間は、彼女が彼女らしく居られる、とても貴重なひと時だ。


「とんでもないことでございますわ。少しでも妃殿下に喜んでいただけたら幸いです。
今日は遠方から取り寄せたハーブティーを淹れてみました。妃殿下のお口に合えば良いんですが」


 コゼットはそう言って、モニカの顔を嬉しそうに覗き込む。


「そうなの?
――――うん、とっても美味しいわ」


 自分の仕事の成果を確認したいのだろう。期待に満ちた表情のコゼットの目の前で、モニカは一口お茶を飲み、穏やかに微笑んで見せる。


「ああ、良かった! 是非ごゆっくり、お楽しみください」


 彼女はそう言って、恭しく礼をし、モニカの私室を後にした。


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