断る――――前にもそう言ったはずだ

2.王家の憂い

 初日の出来事はさておき、城で父親の仕事を手伝うことは想像以上に楽しく、モニカは充実した日々を送っていた。

 まだ正式な女官ではないため、具体的に政務に携われるわけではないが、国が今、どういう方針を立て、どのように動いているのかを間近で見ることができるし、実際に仕事の流れを学ぶことが出来る。

 モニカが尋ねれば、皆嬉しそうに自分の仕事について語ってくれた。彼女が宰相の娘であることに加え、真に国を想っていると分かるからだ。
 軍事に経済、農業、福祉、外交、文化教育など各分野のエキスパートを紹介してもらい、直接話を聞くこともできて、モニカの夢はどんどん膨らんでいく。


 そんな中で、モニカはこの国が直面している喫緊の課題を知ることになった。

 王太子エルネストの結婚問題である。


 エルネストは御年十八歳。本来なら婚約者が居てもおかしくない年齢だ。

 他所の国では幼い頃から婚約者を定め、妃教育を施すという。そう考えれば寧ろ、遅すぎるぐらいである。


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