断る――――前にもそう言ったはずだ

12.招かれざる客

 エルネストは憤っていた。
 危うくモニカに――――愛しい妻に、側妃を勧められるところだったからだ。


 これまでも、側妃を持つよう仄めかされたことはあったが、ハッキリと言葉にされたのはこれがはじめてだ。昨夜はとてもじゃないが冷静で居られなかった。

 日中、何をしていても昨夜の出来事ばかりを考えてしまう。あの時のモニカの表情が目に焼き付いていて、胸がとても苦しくなった。


(僕にはモニカ以外の女性なんて考えられないのに)


 モニカはそうではないのだろうか? 
 側妃ができても平気だと言うのだろうか?

 もしもモニカが他の男のものになることを想像したら、エルネストは気が狂ってしまいそうになる。

 彼がそうであるように、モニカにも自分を愛してほしい――――エルネストはそんな風に想っていた。


(今夜、モニカに話をしてみよう)


 胸を巣食うわだかまり。
 今回ばかりはなあなあで済ませられそうにない。


 言葉少なに夕食を終え、湯浴みをし、寝室へと向かう。
 けれど、そこで彼を待っていたのは愛する妻のモニカではない――――別の女性だった。


< 61 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop