断る――――前にもそう言ったはずだ

16.断る――――前にもそう言ったはずだ

 全てが終わり、ようやく平穏が戻ってきた。

 とはいえ、完全に元通りと言う訳にはいかない。
 朝、モニカのためにお茶を淹れてくれる侍女は居なくなってしまったし、護衛騎士にも欠員が出た。

 今回の件で人員や警備体制の見直しが急がれており、しばらくは忙しい日々が続くだろう。


 それでも毎日朝が来て、やがて夜が来る。

 モニカとエルネストは寝室で二人、向かい合って座っていた。


「――――モニカ、すまない。僕が本当に間違っていた」


 エルネストがモニカに向かって深々と頭を下げる。

 けれど、人間そう簡単には変われない。エルネストは中々次の言葉が上手く出てこないらしく、眉間にグッと皺を寄せる。
 ともすればモニカに対して苛立っていると受け止められる状況だ。

 けれど、彼の真意がそうではないことを、モニカは既に知っている。
 何度も口を開閉し、けれど何を伝えれば良いのか考えあぐねている彼に、モニカはそっと声をかけた。


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