隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
エピローグ
 吊るされた真っ白いウェディングドレスを、アルベティーナは見上げていた。
 明日、このドレスを着てシーグルードと結婚式を挙げる。
 今日はさまざまな人のはからいで、マルグレットの国王とミランと話をすることもできた。
 初めて会った父親は、ミランにも似ていたしアルベティーナにも似ていた。特に、アルベティーナの白銀の髪は、父親の髪と同じ色だった。
「ティナ……」
 ドレスを見上げたままピクリとも動かないアルベティーナを、シーグルードは心配したのか、声をかけてきた。
 アルベティーナは振り返る。
「ルディ……」
 視線が合えば、彼はふっと微笑んだ。
「泣いているのかと思った」
「そのように見えましたか?」
「少しだけ」
 シーグルードは黙ってアルベティーナの隣に並び、共にドレスを見上げた。
「やっと、私もティナの家族になれるのだな」
 その言葉にアルベティーナは驚いた。
「今日、君たちを見ていて、そう思った。あのミランさえ、羨ましいと思った。何しろミランは君の兄だし、家族だ。エルッキやセヴェリだって、君と血の繋がりはなくても、君の家族に違いはない。だが、私だけは違っていた」
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