隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
第四章
 一昨日の夜。あの場所からどのようにして戻ってきたのか、アルベティーナには記憶が無かった。
 昨日の朝、いつもの寝台の上でいつもの夜着に身を包んだ状態で目を覚ました。ただ普段と違っていたのは、頭が重くて身体も(だる)いということ。眠ったはずなのに、身体の疲れが抜けきらないような感じだった。
 ベルを鳴らして侍女のミリアンを呼ぶと、彼女はすぐに姿を見せて、今にも泣き出しそうなほど顔を歪めていた。
『お目覚めになられて、よかったです』
 なぜかすぐさまセヴェリまでが部屋にやって来た。
『昨日の今日で、今日は休みだ。だから、ゆっくり休め』
 事務的な口調でそう告げたセヴェリは、すぐに部屋から出ていった。記憶が曖昧なアルベティーナは、素直にその言葉に従うことにした。
 だがミリアンはアルベティーナの様子を非常に心配していて、食事を部屋にまで運んできたり、アルベティーナが動こうとすれば甲斐甲斐しく世話をしてきたりという始末。過保護、という言葉が脳内によぎったが、とにかく身体が重くて動きたくなかったのは事実であるため、ミリアンの世話を有難く受け入れることにした。
 そうやって昨日はほとんどの時間を寝台の上で過ごしたが、さすがに今日は騎士団の仕事へ行かねばならない。騎士団の仕事はきっちりとローテーションが組まれている。
 アルベティーナは騎士服に身を包むものの、なぜか仕事に行きたくないと思えてきた。彼女がこのような気持ちになるのは初めてのことだ。騎士になることに憧れを抱き、騎士になったことに誇りを持っていたにも関わらず。
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