「君と一緒!」〜人形の彼と同棲したら〜

さらに“お人好し”な私

 私は彼の言っていることがやはり全く分からず、さらに頭を抱えた。

「…約束?誰との約束?私に正体不明な人形をうちに置かなきゃいけないなんて誰が…」

 私は混乱のまま思っていることを言う。

 気づくと彼は悲しそうに顔を背け、ポツリと呟いた。

「…言えないよ…でも、役に立ちたいんだ…。役に立たなかったら…僕は…」

「…あぁ、もう…!!」

 彼が嘘をついているようには思えない。
 そう思った私は彼の話を信じ始めてしまい、あろうことか彼の悲しそうな様子を見て、家に少しのあいだ置いておく気になってきてしまった。

 私はまだ揺れ動く気持ちを振り切るように言う。

「…証拠!」

 彼は私のキッパリとした声に顔を上げた。

「あなたが人形である証拠を見せて!それから、私や周りに害をなさないって誓ってくれる?そうしたら考えてみる!」

 私のその言葉に、彼はパッと嬉しそうに笑った。
 …彼はなんて分かりやすいんだろう。

「証拠を見せればいいんだね?僕が人形な証拠はね…ハサミを貸して?」

「…ハサミ??」

 私はまだ警戒し、訳が分からないながらも凶器になり得るハサミを恐る恐る彼に手渡した。
 すると彼はいきなり、自分の腕にハサミの刃を当て、スッと滑らせる。

 私は思わず叫んだ。

「きゃ!!何してるの!?」

「え?証拠を見せたいんだよ。見て?」
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