幼馴染みの鍵が開いた瞬間から溺愛が止まらない

 仕事帰り、明日の木下さんへの返事を考えてたら、足が喫茶店に向かってしまった。
 奏ちゃんに会いたい。どちらにしろ、顔を見て決心しようと店に入った。

「いらっしゃいませ、一名様ですか?」
「……はい。」
「こちらへどうぞ。」
 窓際の奥の席を示される。
 いつもならカウンター指定席に案内されるのに。足が止まる。私を知らない従業員。
 つまり、あの菜摘ちゃんの友達の人か……まじまじと見つめる。
 ショートボブのつり目の女の子。
 立ち止まる私を不思議そうに見てる。

 とその時、カウンターの後ろのカーテンから奏ちゃんが出てきた。
「あれ?緑、週中なのに珍しいな、どうした?」
「あの、マスターこちらは?」彼女が聞いた。
「彼女が幼なじみの篠原緑。緑、こっちこいよ。」
 フラフラと奏ちゃんに引き寄せられるように、進む。
「彼女が今日から働く木下素子さん。菜摘の友達だ。」
「初めまして。兄がいつもお世話になりありがとうございます。」
「え?」
「兄は、木下圭佑です。」
「え?え?うそっ⁉️」
 素子さんは悪戯をするような目でこちらを見た。
「兄の意中の人に会えてラッキーです。」

< 10 / 36 >

この作品をシェア

pagetop