幼馴染みの鍵が開いた瞬間から溺愛が止まらない

 奏side

 緑は、親友で幼馴染の青の妹だ。
 俺の妹、菜摘も一緒に小さい頃からきょうだいのように何でも話し、いつからかいるのが当たり前だった。
 
 緑は、俺と青が三年生の時に追いかけるように同じ高校に入学してきた。

 吹奏楽部にも入ってきた。部長の俺、副部長の青、会計の唯、庶務の愛子と仕事で残っていることが多くなった。
 緑は横で下手なクラリネットを練習していつも待っていた。
 
 思えば、緑はその頃から急速に可愛くなった。
 青と唯が付き合いはじめて、ふたりで帰るようになった。
 残りのメンバーで帰ると、愛子の手前、緑を妹のように扱ってしまうことが多くなった。
 それも、今思えば言い訳だ。緑が俺に恋愛感情を抱いているのは薄々感じていたし、嬉しかった。
 本当は、俺も女の子として緑を見てしまうことが多くなり、青がいるのもあってブレーキをかけてきた。
 大学へ行くと会わなくなり、愛子に告白され付き合って初めて、緑を失ったと寂しさがきた。

 彼女が大学へ入り、彼氏が出来たと青から聞いた。
 俺は、祖父の代からの喫茶店の手伝いをしていたが、卒業と同時にその喫茶店を継いだ。
 二号店を隣町に作るので両親と菜摘がそちらを経営しながら、その店の二階に引っ越していった。
 俺が継いだ時には、祖父は入院して実家には俺ひとりだった。
 店は大学三年生になった緑がバイトに入り支えてくれた。
 慣れない店を回すのに懸命で、忙しくて彼女を労るどころか甘えて頼って二年経ち、緑は今の会社に就職した。

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