幼馴染みの鍵が開いた瞬間から溺愛が止まらない

 22時を回っていた。
 わざわざ、最寄り駅で降りて家の近くまで送ってくれた。
 奏ちゃんのコーヒーショップの前は公園になっている。
 私の家はその隣。
 通りを曲がると公園が見えた。
 「もうすぐ着くので、ここまでで大丈夫です。」
 「ふーん、家どこ?」
 「公園の前の店の横が家なので。」
 「そうなの……。」
 店で妹さんが働いていること、知っているはずだけど……木下さんは何も言わない。
 店はすでに閉まってる。彼女も帰ったはずだ。
 
 木下さんは、公園に入ると私に向き直った。手を握る。
 びっくりして顔を上げると腕を引かれた。
 「好きだよ。本当に。いい返事待ってる。」
 シトラスの香りに抱きしめられた。
 横にいるといつもうっすら香っていたけど、腕の中だと濃厚だ。
 つい、胸を押し返してしまった。
 「緑、連絡しろって言ったのに。待ってたんだぞ。」奏ちゃんの声がした。
 後ろを振り向くと、店の前に奏ちゃんが立っている。どうして?
 こちらに歩いてくると、木下さんに頭を下げた。
 「すいません。送っていただいたんですね。ありがとうございました。」
 「え?ああ、あの……貴方は?」
 「こいつの幼馴染みです。」
 「奏ちゃん、びっくりさせないで。木下さんすみません。今日はごちそうさまでした。送っていただきありがとうございました。」
 深々と頭を下げ、礼を言う。
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