幼馴染みの鍵が開いた瞬間から溺愛が止まらない

 
 奏ちゃんの行動力には驚いた。さすが、元吹奏楽部長様。
 あっという間に親に挨拶して、結婚させてくれと頭を下げた。
 今更だれも反対しないわよと母は笑い、父は君なら許すと嬉しそうにしていた。

 兄さんは、一言良かったなと頭をなでてくれた。
 「あいつホントにヘタレだなー。お前が先に告ったらしいな。」
 「でも、お兄ちゃんのお陰だよ。木下さんの話聞いて、焦ったって言ってた。」
 「しょうもないやつ。まあ、付き合えば結婚になるのは固いと分かってたけど、一週間以内ってのは驚いたな。」

 唯さんも、笑っている。
 「奏君って、結構昔から緑ちゃんのこと特別だったのに、踏み出せなくてホント困った人だよ。私達、疲れちゃった。間に合って良かったね。緑ちゃん、人のものになるところだったじゃん。あは。」
 相変わらず、毒舌。
 「これから、あいつは俺の弟だぜ。唯、ふたりでこき使ってやろう。」
 「そうね。」
 恐ろしい夫婦……。
 「実は、子供が出来たの。早めに結婚式してね。」
 なんと、二ヶ月になったところらしい。

 会社では、葉月に報告し、飛び上がるほど喜んでくれた。
 愚痴を聞いてくれた彼女には感謝しかない。
 これからは、彼女の相談を聞いてあげる立場になれるといいけど、いかんせん経験値の差がありすぎる。

 木下さんは、お断りする前にどうやら何か感じたのか、妹さん経由なのか、あからさまに接し方が変わった。
 なんというか、そっけない、目を合わせない。
 この人がここまでなのは、ちょっとショックで、ますます言い出せなくなってしまった。

 
< 26 / 36 >

この作品をシェア

pagetop