「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~

ドレスを貸してもらう

「大したことはないよ。わたしの場合は、口だけしか武器はないからね。陛下やカストのように、命を懸けるわけではない。のほほんとしたものさ」

 侯爵は、謙遜した。だけど、そうではないことは想像に難くない。

 彼はフランコやカスト同様、様々な国を相手取って戦い、勝利をつかんでいるに違いないわ。

「ナオ、ちょうどいいタイミングだ。いま、アロイージ王国は大変なことになっている。陛下からきかされていたからね。諜報員や軍と連携し、情報を集めたり援助の準備をしている最中なんだ。入ってきている情報だけでも、すさまじい水害で王国内のいたるところに被害が出ている」

 侯爵の表情は、これまでとは違って真剣である。

 あれほど、「自分はもう関係はない」と言いきかせていた。でも、実際に被害が出ていることをきくと胸が痛み、責任を感じてしまう。
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