「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~

基本、乗馬服なの?

 彼女の寝室にあるクローゼットは、いまのわたしが住まわせてもらっている宮殿の寝室のクローゼット(それ)よりかは小さいけれど、お姉様のとおなじくらいの広さはあるかしら。

 驚くべきことに、そのクローゼットのラックにかかっているほとんどが乗馬服なのである。
 それこそ、驚きで腰を抜かしてしまうかと思った。

 こんなに乗馬服が並んでいると、いっそ清々しい。圧巻すぎる。

 乗馬服の専門店でも、これほど並んでいるかしら。

 それにしても、乗馬服、乗馬服、乗馬服、乗馬服。 はたして乗馬服以外の服はあるのかしら。

 とにかくすごすぎるわ。

「ナオ、口、口。あんぐりと開いたままよ。わかっている。だから、何も言わないで」

 エルマに体を揺すられ、やっと意識が戻った。

「呆れるでしょう?」

 侯爵夫人が隣に立って尋ねてきた。
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