「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~

虐待の跡

 ボルディーガ侯爵夫人とエルマは、わたしが準備をはじめようとしたタイミングで来てくれた。

 お直しした侯爵夫人のドレスは、昨夜届いたらしい。それを持って来てくれたのだ。

 侯爵夫人は、いまでもうっとりするほど美しい。ドレスのデザインや色合いが上品であることは言うまでもなく、化粧も控えめ、靴や装飾品も控えめな感じで侯爵夫人の美しさを際立たせている。

「まあっ、エルマ。あなた、見違えたわ」

 大げさかもしれないけれど、エルマを上から下まで五度見直してしまった。

 それほど変わってしまっている。
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