今夜も君を独り占め。

身体を奪われた話。





ロックを開けて,建物に碧が入っていく。

それはもう大きなマンションの,上へ上へとエレベーターは上った。

碧が鍵を挿したのは,正真正銘,碧1人が住むためだけの部屋だ。

広い玄関から入り,最奥のリビングの手前,左手の部屋に入る。

部屋の中には,黒いベッドとテレビ,そしてカーテン……のみ。

ベッドは俺ら男が2人並んでも,必要ない程でかい。

1人で住むにはもて余すこの家。

他に2部屋がらんとした部屋があって,まともなのはリビングと浴室だけ。

ただ碧が睡眠を取るだけの,贅沢な使い方をしているだけに他ならないのだが……

何もないせいもあり,つくづくそうゆう部屋,みたいに見える。

実際,そうだったんだろうと思った。

特に口に出すような何かは思い付かない。

ただ言い知れぬ感情が,形にならないまま喉に張り付く。



「何してるの?」



ベッドにダイブし,うつ伏せで俺を見る碧。



「初めてここに上がった時のこと,思い出してた」



そう,あの時も……

色んな悩みと,酔いで痛む頭で同じような事を思ったのだ。
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