若旦那様の憂鬱

正面対決?

次の日の夕方6時少し前、

花と柊生は馴染みの喫茶店を訪れる。
オーナーに頼み人目の付かない1番奥の席に座る。

2人横に並び前嶋が来るのを待つ。

柊生は緊張気味の花の手をぎゅっと握りしめて勇気付ける。

「俺が居るから大丈夫だ。
結婚の事も話していいか?
花を諦めてもらう為なら手段は選ばない。」

「柊君待って、でもお仕事で会う事もあるでしょ?あんまり険悪な感じにならない方が良いよ。私が頑張って話してみるから大丈夫。」
今度は花が柊生の手をぎゅっと握りしめる。

「分かった。」

柊生は花を守る為にここにいる。
花が話したいのなら口出しはしない、
花の好きにさせてやろうと心に決める。

「すいません、お待たせしてしまいましたか?」
時間ギリギリで前嶋が店に入って来る。

花と柊生は立ち上がり出迎える。

「いえ、お忙しいところ無理言って申し訳けありません。」
花が頭を下げるので、柊生も合わせて頭を下げる。

「いえ、こちらの方こそ、お見合いを断られたのに今だに引きずってしまって申し訳ないです。」
前嶋はそう言って苦笑いする。

「とりあえず、座りましょうか。」
と、柊生に促されて3人は席に着く。

「あの…前嶋さん。実はまだ、お話ししていない事がありまして……。」

花が戸惑いながら話し出す。

「あの、私達実は……結婚していまして、
とりあえず入籍だけですが、1か月前に籍を入れています。」

「えっ……⁉︎」

さすがの前嶋も言葉を失くして2人を見比べる。

「それについては僕に説明させて下さい。」
柊生が、そう言って話し出す。

「うちの大女将は良い日をとても大切にする昔ながらの人間でして、
先月の丁度大安の日に籍を入れるべきだと
言われました。
僕としては、近いうちに結婚したいと思ってましたし花も承諾してくれたので、
祖母に挨拶をしに行ったその日に婚姻届を提出しました。」

「花さんはそれで良いのですか?
自由にと言いながら、貴方は一橋家に縛られている。若旦那と柊生さんと結婚となると、貴方がいずれ女将業を継ぐ事になるのでは?」
心配そうに前嶋がそう言う。

「私もその覚悟でいたのですが……、
誰一人として私に女将業を押し付けて来なくて、逆に好きな事をしなさいと言われます。
幼児教育の大学に進むのを1番喜んでくれたのは義父ですし、柊君も…彼も私の夢を応援してくれてます。」
にこやかに笑う花は幸せそうで、
お見合いの時に見た笑顔とは明らかに違うと前嶋は思う。
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