無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない

04. 違和感と完璧令嬢


「はあ、疲れた……」


 ちゃぽんとお湯を手ですくい顔にかける。グレッグお手製のローズオイルの香りがふわりと立ち上がり、今日の疲れを癒やしてくれた。はあ、今日はいろんな場所に行って、すごく疲れたわ。お風呂に入った後はもう寝ることにしよう。身支度をし大きなあくびをしながらベッドに向かうと、何か違和感を感じる。なんだろう? 少しぼうっとした頭であたりを見回すと、ベッド横にあるチェストの引き出しがほんの少し開いていた。


(あら? いつもきっちり閉まってるのに。そういえばこのチェスト、閉めるのにコツがいるんだったわ)


 お祖母様から譲ってもらったアンティークのチェスト。2段目の引き出しだけ閉めるのにコツがあったけど、最近は使っておらずもっぱらテーブル代わりになっていた。確認のため開けてみても、何も入っていない。


(なにも盗られているものも無いし、気のせいね)

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