君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~

ウィステリア王国

ウィリアムは朝から興奮を抑えきれなかった。
マグノリアとの国境に配備していたエヴァンズの隊から早朝に早馬が来た時は
ついに開戦したかと冷や汗をかいたが、
エヴァンズの報告は全く違っていた。

「アリス、アリスっ!大変なことが起きた!」
ウィリアムは幼い王太子に朝食を食べさせる王妃を呼ぶ。
「あら、ウィル。朝からそんなに興奮してどうしたの?」
「ついに見つかったんだよ。姉さんの忘れ形見のジゼルが。エヴァンズが国境付近で保護して今、我々のもとに送り届てくれている。今日の夜にはここに到着するぞ。あーどんなに会いたかったことか。」
ウィリアムの突然の報告に、アリスも思わず手が止まる。
「それは本当なの?だったら私もジゼル様にお会いするのが待ちきれませんわ。ジゼル様のお迎えの準備をしなくてはいけませんね。」
「もちろんだ。姉上の部屋はそのまま残しているから。そこを掃除させよう。きっとジゼルも喜ぶはずだ。」
少年のように喜ぶ夫の姿にアリスは目を細めた。

ウィリアムが年の離れた姉を慕っていたことも、
その姉が遺した一人娘をどうにか保護したいと思っていることも、
アリスは知っていた。
(エドウィナ様。生きてお会いすることはできなかった。その娘のジゼル様はどんな姫君なのだろう)
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