君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~

孤立する王妃

傷もすっかり癒え、休息もたっぷりと取ったおかげで
クララはすっかり元気を取り戻していた。
毎朝王妃から届けられる色とりどりのお見舞いの花たちも
気落ちしていたクララの心をずいぶんと慰めてくれた。
(毎日いただくから、私の部屋に納まりきらなくて家中花だらけになってしまったけど。)

しかし何よりクララにとって嬉しかったのは、
片思い中の上司から週に一度ほどのペースでお見舞いのカードが送られてきたことだった。
あまり筆まめではないのか淡々とした短い内容だったが、
クララの体調を気遣う言葉、最近の騎士団での出来事、復帰を待っていることなどが綴られていて、
クララは思わずニヤけてしまった。
ロートシルトからのカードは宝箱に大切に閉まってある。

父親の反応も意外だった。
クララはてっきり父親に王妃を怪我させたことを咎められると思っていた。
最悪騎士団を辞めさせられるかもしれないとまで覚悟していた。
しかし、クララの病室に入ってきた父親の第一声は「よくやった」だった。
どうやらことの一部始終を見ていた馬番がクララの対応について説明してくれていたらしい。
「お前の対応は完璧だったよ。国王陛下ご夫妻もお前に大変感謝しているそうだ。それに何より、お前がこうして無事に生きてくれていることが父さんは嬉しい。」
「私、王妃様の護衛騎士なのに王妃様に怪我させちゃった。騎士団で何かお咎めがあるんじゃないの?」
娘の言葉に一瞬きょとんとした顔をしたラーデマッハー中将は、豪快に笑いだした。
「この子は何を言い出すかと思えば。自分の任務を全うしたお前に何を罰することがある?クララに罰則を喰らわせたら、私がロートシルトを騎士団からたたき出してやるわ!」
そう叫ぶと、ラーデマッハー中将は目を細めて愛娘の頬を撫でる。
「今後のことは何も心配いらないよ。全快するまで実家で静養するようにと国王陛下もおっしゃっている。久しぶりにお前が家にいるから母さんも喜んでいるし、親孝行と思ってのんびり寛いでいなさい。」
「はい、お父様。」

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