【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第115話】

それから2日後の5月10日のことであった。

ところ変わって、鎌倉《かまくら》・由比ヶ浜《ゆいがはま》にあるきよひこさんと家族が暮らしている一戸建ての家にて…

きよひこさんは、シングルの弟のかずひこさんとほぼ寝たきりの父親の男3人がひとつ屋根の下で暮らしていた。

きよひこさんには、過去に離婚歴が5〜6度あった。

最初の嫁さんが大病で亡くなったあと再婚した。

しかし、2度目以降は夫婦間で生じた深刻な対立が原因で離婚と再婚を短い周期で繰り返していた。

シングルの弟のかずひこさんは、39歳になったので早く結婚がしたいと気持ちがあせっていた。

コンカツがしたいとけど、周囲の理解が得られない…

理由は、それだけではなかった。

かずひこさんが勤めている缶詰め工場のお給料が低いことに加えて、兄の離婚歴が多すぎることなどに原因があった。

この時、敦賀からアタシの知人の妹さん夫婦がきよひこさんたちが暮らしている由比ヶ浜《ゆいがはま》の家にやって来た。

知人の妹さんのダンナは、きよひこさんに対して再婚してほしいとコンガンした。

家の居間で、こんな会話が繰り広げられた。

「考え直せと言うけれど、私にどうしてくれと言うのですか!?」
「私たちは、きよひこさんにお願いを聞いてほしいのです。」
「それは、かずひこに結婚するなと言いたいのでしょ!!」
「そんなことは言ってないよぉ…かずひこさんは39歳だから…」
「かずひこが39歳だから結婚できないと言いたいのか!?」
「いや、私たちは40過ぎになったら難しくなると言うてるのよぉ〜」
「恋人さんにふられて傷ついたかずひこさんを見るのはイヤなんだよぅ〜」
「だから私たちは、きよひこさんにお願いしているのよ。」
「だからお願いって何ですか!?私に再婚しろと言うのですか!?」

きよひこさんが言うた言葉に対して、アタシの知人の妹のダンナはあつかましい声で『そうだよ…きよひこさんに再婚してくれとお願いしているのだよぉ…』と言い返したあと、決めつけ言葉を言うた。

「かずひこさんが勤めている缶詰め工場のお給料は極力少ないみたいだね…そんな少ないお給料でどうやってお嫁さんを養うのか…と言うことを考えたことはあるのか…40過ぎの男の初婚は世間体《せけんてい》…」
「決めつけ言葉を言うのはやめたまえ!!」
「決めつけじゃないよぉ…」
「今のかずひこさんは独身の方がいいと思うよ…この家に女性のきょうだいが4人いたけど、4人とも遠方へ嫁いだので帰ってくるメドが立たなくなった…寝たきりのお父さまの介護の問題などがあるから、きよひこさんに再婚してほしいと頼んでいるのよ…温かいごはんとみそしるをついでくれる人がいない…おいしい目玉焼きを作る人がいないなんてさみしいでしょ…」

思い切りブチ切れたきよひこさんは、アタシの知人の妹夫婦に対して手当たり次第にあるものを投げつけながら怒鳴り声をあげた。

「帰ってくれ!!」
「帰ってくれ!?」
「そうだよ!!かずひこをブジョクするだけブジョクしたから帰れといよんや!!」
「私たちは、かずひこさんのためを思ってきよひこさんに再婚してほしいと…」
「断る!!帰れ!!」
「このままでは帰ることができないのだよ…」
「よその家に居座る気か!?」
「居座る気はありませんよぉ…」
「いいや!!帰れ!!」
「このままでは帰れません…」
「誰に頼まれてここへ来た!?」
「誰って、義姉《あね》に頼まれて来たのだよ…義姉の知人の女性を助けてくれと…」
「他へ回せ!!」
「他へ回せと言うけど…義姉《あね》の知人の女性は9度の離婚歴と再婚歴があるのだよ…年齢的に難しいのだよ…」
「難しいからこっちに押し付けたのか!?」
「押し付けていないよ…きよひこさんに幸せになってほしいからお願いしているのだよ…」
「帰ってくれ!!オレは不幸なままでいい!!」

きよひこさんは、アタシの知人の妹さん夫婦を力付くで追い出そうとした。

この時、奥の部屋にいるお父さまが具合が悪い声できよひこさんを呼んでいた。

アタシの知人の妹さんのダンナさんは、きよひこさんにめんどくさい声で言うた。

「きよひこさん…奥の部屋にいるお父さまの気持ちが分からないのかな…」

きよひこさんは『ぶっ殺してやる!!』と怒鳴り声をあげながらアタシの知人の妹さん夫婦に向かって金属バットをふりまわして暴れた。

アタシの知人の妹さん夫婦は、身の危険を感じたので大急ぎで家から出た。

この時、アタシはお見合いを引き受ける気持ちは全くなかった。

また相手は、クソバカ以下の男だからイヤ!!

また相手方の家の親きょうだいか相手の連れ子と同居するのもイヤ!!

再婚しても、また同じことの繰り返しになるからイヤ!!

アタシは、背中を染めていた刺青をおそろしい鎌《かま》を持っている黒服の死神とその周りにガイコツが大量に横たわっていて、真っ赤な空に黒いコウモリがたくさん飛んでいた…のよりし烈なインパクトの絵柄に変えた。

また両肩から左右長袖で隠れる範囲に染めていた青龍《りゅう》のウロコで唐獅子牡丹《からじしぼたん》の刺青《すみ》は、乳房とおまた以外の全身に拡《ひろ》げた。

これにより、アタシの男ギライがより一層強まった。

同時に、アタシは男に対するうらみつらみをより一層強めた。
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