【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第130話】

それから4時間後のことであった。

上田市にある電子部品工場からお迎えの車が家の前に到着した。

あいつ(ここよりダンナのことはあいつと記載します)は、ゆうき(さん付けで記載せずに呼び捨てに変えます)のいる部屋に呼びに行った。

「ゆうき!!まだ支度ができてないのか!?いつまで工場の人を待たせる気だ!?甘ったれるのもいいかげんにしろ!!」
「あなた…もうやめて…もういいわよ…アタシ、工場の人にお断りしてくる…」

アタシは、工場の人に対して職場実習をお断りをした。

この時であった。

(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…)

遠くに見える浅間山から恐ろしいマグマの音が響いたのを聞いた。

昨日の昼、近所の奥さまとひどい大ゲンカを起こしたことが今もわだかまっていた。

アタシの気持ちは、今にもギブアップしそうになった。

工場の人が帰った後、アタシとあいつは居間のダイニングテーブルで話し合いをした。

「アタシ…いらないことをしたかもしれないわ…」
「とし子は何も悪くはないよ…悪いのはみんなぼくの方だ…」
「どうしてよ?」
「ゆうきがそのようになった原因を作ったのは全部ぼくなんだよ…とし子は何も悪くない!!」

あいつが言うた言葉を聞いたアタシは大きくため息をついてから言うた。

「あなた…アタシ…今から村《ここ》から出て行くわ…ここにいたら、アタシ…殺される…」
「分かってるよ…ぼくも、この家から出る…ゆうきはぼくがどうにかするから…」

これにて、アタシとあいつの結婚生活は破綻した。

話し合いを終えた後、アタシは着替えとメイク道具をボストンバックに詰めた。

夕方4時過ぎであった。

アタシは、着替えとメイク道具を詰め込んだボストンバックとさいふとスマホと貴重品が入っている赤茶色のバッグを持って、家から出た。

この家に居続ければ、ゆうきに殺されてしまう…

これで、アタシの12度目の結婚生活が完全に破綻した。
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