【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第44話】

その日の夜遅い時間であった。

ところ変わって、塩江町安原上《しおのえちょうやすはらかみ》の雑木林にて…

「お願い助けて…命だけは助けて…お願い…イヤ!!」

高松市内で暮らしている22歳の女子大生がバイト先から帰る途中の道で、突然恐ろしい覆面をかぶった男数人に無理やり車に乗せられた。

その後、雑木林《ここ》にむりやり押し込まれた。

女子大生は、男たちに倒されて身体を押さえつけられた。

(ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!)

「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

女子大生は、着ていた衣服を鋭利な刃物で切り裂かれたあと男たちからシツヨウに犯された。

そして、ボロボロに傷ついた姿で亡くなった。

事件の翌朝のことであった。

女子大生の遺体は、所轄の警察署の霊安室に安置されていた。

霊安室に、金髪ではでな服装の男がいた。

亡くなった女子大生は、こともあろうに7月25日の深夜にほのかさんをレイプした男のカノジョであった。

カノジョを亡くした悲しみに暮れていた時であった。

霊安室に捜査1課の刑事8人がドカドカと足音を立てて男の元にやって来た。

「(男A)!!逮捕状だ!!」

刑事のひとりが、広げた書面を男に見せた。

「逮捕状…オレが何をしたと言うのだよ…」

逮捕状を突然見せられた男は、ひどく動揺した。

刑事のひとりが、男に対して逮捕する理由を告げた。

「オドレの逮捕容疑は、殺人罪である!!」
「殺人罪…」
「丸亀の繁華街で乱闘事件を起こして逮捕されたオドレのダチが7月25日に母子をレイプして殺したことを自首したぞ!!」
「そう言うことで、今からオドレの取り調べを開始する!!」

刑事のひとりが、手錠《わっぱ》を出して男の両腕にかけようとした。

男は、泣きながら無実を訴えた。

「待ってくれ…オレは無実だ!!」
「ウソをついてもダメだ!!」
「オレはカノジョを亡くして悲しんでいるのだよ!!」
「ゼンニンヅラすんじゃねえよ!!」
「離せ!!」
「うざい男だな!!」
「母親と赤ちゃんを殺しておいてなんじゃあいよんぞ!!」

(ドカッ!!)

刑事の1人が、男のこめかみをグーで激しく殴り付けた。

「課長!!」
「おまえら、こいつをボコボコに殴りつけて殺すぞ!!」
「殺すって…」
「取り調べはどうするのですか!?」
「こいつは心神喪失《そうしつ》でシャクホウされるから取り調べても意味がない!!だから殺す!!」
「やむを得ない!!」
「オラ!!立てや!!」

母子が殺された事件は、共犯者の男が自首したことによりもうひとりの男が逮捕された。

もうひとりの男は、刑事たちから集団リンチを受けたあと、リーダーの刑事にナイフでズタズタに刺されて殺された。

その一方であった。

オレンジタウンのあいつ(ここからダンナはあいつと表記します)の家では、深刻な問題が発生した。

義弟《おとうと》(ここからけいさくさんは義弟と表記します)の大学休学が長引いたので、あいつは義弟《おとうと》に対して職場実習に行って採用をもらってこいと怒った。

義弟《おとうと》は、職場実習に行ったけどリタイアを繰り返した末にひきこもりになった。

あいつは、ひきこもりになった義弟《おとうと》に対して『何を甘ったれているのだ!!職場実習に行け!!』と怒鳴りつけたあと、部屋から引きずり出して車に乗せて、職場実習先の事業所へ連れて行った。

しかし、義弟《おとうと》は実習先で暴れて事業所に大損害を与えて、ヤーメタ…

そしてまた、ひきこもりになった…

義弟《おとうと》の気持ちのすさみがさらにひどくなった。

一方、ゆうさくさんは徳島へ出張に行ったと書いたが、後になって、高知市で暮らしている愛人のソープ嬢のもとにいたことが分かった。

ゆうさくさんは、ソープの女にのめり込んだ末に女の婚約者(ヤクザ関係の男)とトラブった。

その末に、ナイフでズタズタに刺されて殺された。

あいつは『専業主婦がいなくなった…とし子…とし子…』と女々しい声で泣いていた。

加えて、酒浸りになった。

ほのかさんが殺された事件から7日後の夕方頃であった。

アタシがバイトしている県庁前通りのファミマに、武方《たけかた》さんが再びやって来た。

アタシは、外のゴミ箱の整理をしていた。

武方《たけかた》さんは、アタシに対してあいつが悲しんでいるから家に帰ってくれと言うた。

だが、アタシは断固拒否《だんこきょひ》した。

「武方《たけかた》さん…アタシはダンナから受けたきついDVが原因で心身ともに傷ついているのよ…それなのに、なんであいつの元へ帰れと言うのよ!?あいつはなさけないわよ!!でかいのはずうたいだけで、精神面はチャイルド以下よ!!アタシは、チャイルド以下の虫けら男とは離婚するわよ!!」
「とし子さん、こっちはものすごく困っているのだよ…家に専業主婦がいないと困るのだよ。」
「はぐいたらしい男ね!!専業主婦がいないと困る理由はなによ!!」
「ごはんを作ってくださる人がいないと困るのだよ。」
「ごはんに困るのであれば、フードサービスを利用することを勧めたらァ〜…3食決まったメニューが届くのよ…家事に困ると言うのであれば、家事代行サービスを勧めなさいよ!!」
「(つらそうな声で)そ、それは…」
「あいつはふざけているわよ!!不都合なことが生じたら急に戻って来てくれなんて…あいつは自分で生きて行く力がない石ゴカイ(釣りエサ)以下のクソバカよ!!」
「とし子さん…しゅうさくさんには、離婚歴があるのだよ…」
「離婚の原因は全部DVであることをなんで話さなかったのよ!!あいつは再婚してもまた同じことを繰り返すから大バカなのよ!!」
「とし子さん…」
「何とか言いなさいよダンソンジョヒ主義者!!」
「悪かったよぉ…だけど、とし子さんの両親がどうしてもどうしてもと言うたから…」
「両親は、アタシの花嫁姿が見たいからそのように言うたのでしょ…」
「娘の花嫁姿を見ることは…親の楽しみなんだよぅ~」
「あんたね!!アタシは思い切りキレているのよ!!三原の実家へ帰って静かに暮らそうと思っていたけど、実家を棄《す》てることにしたわ!!」
「棄《す》てる…それじゃあ、どうするのだね!!」
「水商売で働いている知人のコの家へ行く!!」
「とし子さん、もう一度だけしゅうさくさんと話し合いをしてください。」
「イヤ!!拒否するわよ!!」
「拒否するって…」
「あのね!!今アタシはバイト中よ!!アタシを押さえつけるのであれば、知人のヤクザの組長に電話するわよ!!知人の組のチンピラ数人をあんた方へ送るから覚悟しなさいよ!!」

武方《たけかた》さんをどなりつけたアタシは、再びゴミ箱の整理を再開した。

アタシは、あいつとやり直す気はもうとうない…

あいつの家の親類縁者たちを一人ずつ血の池地獄に墜《お》として焼き殺してやる!!
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