【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第8話】

8月29日のことであった。

あいつの家から逃げ出したアタシは、新居浜市内にあるデリヘル店の個室で仮住まいをしていた。

アタシは、あいつの家とはゼツエンした…

あいつの親きょうだいが助けてくれと言うても、アタシは『ふざけるな!!』と言うて斬《き》り棄《す》てる!!

あいつの家の親類縁者たちもまとめてうらみ通すわ!!

話は変わって…

この日、アタシは周桑病院に入院している義母のお見舞いに行った。

義母は、この1ヶ月の間にすっかりやせ細った。

表情は悲しげで、いつもうつむいてばかりいた。

義母は、入院してから10日目以降の食事は流動食で栄養を補っていた。

今の義母の姿をみたアタシは、ものすごく悲しい気持ちに襲われた。

それから数十分後のことであった。

病院から出たアタシは、新居浜へ戻ろうとしていた。

その時であったが、同じ病院に入院している97歳のお母さまのお見舞いに来ていた66歳の女性であいつの家の近所で暮らしている奥さまに呼び止められた。

アタシを呼び止めた奥さまは、アタシに声をかけた。

「としこさん、少しの間だけかまん?」
「あら、雄一郎さん方の家のとなり近所の奥さまですね。」

このあと、アタシは近所の奥さまと一緒に病院の駐車場の裏手へ行った。

病院の駐車場の裏手にて…

奥さまは、ものすごく言いにくい声でアタシに言うた。

「としこさんもつらいよね、あんたは嫁ぎ先を間違えたようねぇ。」
「奥さまのおっしゃる通りです…クソッタレのダンナは、せっかく入社できた職場をやめて家出をして行方不明になった…義弟は、高校卒業認定試験を経て大学受験で受かった大学をやめた…フクガクしてがんばって大学に通えばよかったのにと思うわよ…義父はキッチンドリンカーになった…アタシは…あななクソッタレの家とはゼツエンしたわよ!!家のモンが死んでやるとわめきちらしても、アタシは一切助けない!!死にたきゃ死ねばいいのよ!!」

近所の奥さまは『そうよね。』と言うた後、多少のイヤミを込めてアタシに言うた。

「としこさん、これうちにとどいた回覧板だけど…ご存じかしら?」
「回覧板。」

アタシは、奥さまからコピーされた紙面を受け取った。

紙面は、愛媛県警《けんけい》の広報のコピーであった。

アタシは、広報の記事を読んでみた。

そしたら…

8月2日と3日に、義兄《あに》の会社が企画したおんまくお見合いに参加していた新居浜の信金の女性職員さんが8月26日に新居浜市内の自宅を出たまま行方が分からなくなった…

女性の家族が警察署に捜索願いを出した…

行方不明になった女性は、Aさんと婚約していた女性だった。

それを知ったアタシは、顔が真っ青になった。

「どういうことですか?」
「としこさん、心当たりはあるの?」

アタシは、近所の奥さまからの問いに対して『ありません。』と冷や汗まじりの表情で答えた。

すると奥さまは『フーン、そうなのだ…』と冷めた声で言い返した。

そして、ひにくりまじりの言葉でアタシを攻撃した。

「としこさん、健一郎さんのことでお話があるけどぉ…どういうことかしらねぇ!!」
「どういうことって?」
「あんたね、逃げ回るのもたいがいにしてよね!!」
「どういうことでしょうか?よく分からないのですけど…」
「あんたは、知らないうちにシングルのきょうだいを孤独の淵に追い詰めた…と言うことに気がついていないわよ!!」
「奥さま!!変なことを言わないでください!!」

アタシがこう言うたら、奥さまはさらにイヤミをこめて『変なこと言いたくなるわよ…』と言い返した。

アタシにハンロンした奥さまは、アタシが傷つく言葉をボロクソに言いまくった。

「あのねとしこさん、今治にいる知人から聞いた話だけど…健一郎さんが中学時代の友人知人たちと一緒に松本町の酒場街にいるところをよく目にしているといよったよ…アタシの知り合いのチーママから聞いた話しだけど…健一郎さんは合コンで知り合った女性と湯ノ浦のラブホに出入りしていた…と言う話も聞いたのよ。」
「合コン?ラブホ?」
「あんたね!!すっとぼけてる場合じゃないわよ!!あんたの義弟《おとうと》がラブホで女といやたい(きたない)ことしよった…と言う話を聞いて、なんとも想わんの?」
「奥さま!!変なことを言わないでください!!」
「何いよんであんたは!!義弟《おとうと》を孤独の淵に追い詰めておいて否定するなんてドサイテーだわ!!…そのあげくに、あんたの義弟《おとうと》は女と一緒に行方不明になったのよ…おりが悪いことに、女には婚約者がいたのよ…婚約者の男は…高知の極悪非道のヤクザ組織のナンバーツーの男よ…あんたの義弟《おとうと》が婚約者《おんな》をドロボーしたことがかれらの耳に入ったから大ゴトになったかもしれないわねぇ~…そのうちあんたはコンクリ詰めにされて、浦戸湾《うみ》へドラム缶ごと沈められるわよ…オーッホッホッホッホッホッホッホッホッホッ〜…」

アタシをボロクソに言いまくった奥さまは、大声で高飛車嗤《タカビーわら》いをあげた。

「奥さま!!おやめください!!」
「あーら、何がやめてくださいかしらねぇ…」
「奥さま!!これ以上アタシをブジョクするのであれば、アタシの知人の格闘家の男にチクるわよ!!」

ブチ切れたアタシは、奥さまにツバを吐いてイカクしたあとその場から立ち去った。

サイアク…

一体なんなのよ…

こんなことになるのであれば、結婚よりキャリアが全ての人生を選べばよかった…

アタシは、奥さまからイカクされたことが原因で気持ちがイシュクした。

そして、9月1日の未明ごろに恐ろしい事件が発生した。

恐ろしい事件は、河原津漁港《かわらずのみなと》から1キロ離れたところにある古びた納屋《こや》で発生した。

「離して!!やめて!!助けて!!誰か!!」

行方不明になっていた新居浜市の信金の女性職員さんが数人の恐ろしい覆面をかぶった男のグループにつかまった。

その後、古びた納屋《こや》に無理やり押し込まれた。

「ギャーッ!!やめて!!」

焼き付くような叫び声と共に、布が思い切り破れる音と男たちの薄気味悪い声が納屋《こや》の中に響いた。

事件発生から3時間後であった。

河原津漁港《かわらずのみなと》の周辺に、愛媛県警《けんけい》のパトカーがけたたましいサイレンを鳴らしながら次々と現場に入った。

古びた納屋《こや》の近辺に、立ち入り禁止のロープが張られた。

キンリンの住民のみなさまは、ものすごく不安な表情で見つめていた。

信金の女性職員さんは、納屋《こや》の中でボロボロに傷ついた姿で亡くなった。

愛媛県警《けんけい》の捜査1課の警察官たちは、納屋《こや》の中で物的証拠を探していた。

そんな時であった。

「警部!!ありました!!」
「どうした!?証拠は見つかったか!?」
「容疑者がかぶっていた恐ろしい覆面が見つかりました!!同時に、容疑者の男たちが勤務している会社も分かりました!!」

恐ろしい覆面をかぶった男のグループのリーダーの男が武方《たけかた》さんが経営している運送会社の従業員さんと判明した。

愛媛県警《けんけい》は、トントン拍子で武方《たけかた》さんが経営する会社の従業員さんたちに対して逮捕状を発行するなど…より過激な行動に踏み切った。

それが原因で、武方《たけかた》さんが経営している会社はよりし烈な痛手《パンチ》を喰らった。

事件の翌朝のことであった。

思い切りブチ切れた武方《たけかた》さんは、会社に来るなりに残っている6人の従業員さんたちを殴りつけた。

従業員さんたちは『ぼくたちは知らない…』と口々にハンロンした。

武方《たけかた》さんは、よりし烈な怒りをこめながらグーで従業員さんたちを殴り付けた。

(ガツーン!!ガツーン!!)

従業員さんたちをグーで殴りつけた武方《たけかた》さんは、全身をブルブルと震わせながら怒りまくった。

その後、武方《たけかた》さんは従業員さんたちの雇用保険と退職金の証書などをすべて破棄した。

それから5日後に、裁判所に破産宣告を申請した。

武方《たけかた》さんがより過激な行動に踏み切ったことが原因で、従業員さんたちは『武方《クソバカ》をぶッ殺してやる!!』と激怒したので、より過激な行動を起こす恐れが出た。

武方《たけかた》さんの怒りの矛先は、義兄《あに》にも向けられた。

武方《たけかた》さんは、義兄《あに》とケンカする目的で壬生川《にゅうがわ》へ行った。

ところ変わって、あいつの家の近くにある幼稚園の跡地にて…

河原津漁港《かわらずのみなと》で発生したレイプ殺人事件のリーダーの男は義兄《あに》だと決めつけた武方《たけかた》さんは、右足で義兄《あに》を思い切りけつりながら(けりながら)『すぐにケーサツへ自首せえ!!』と怒鳴り付けた。

「何だよ!?オレがレイプ殺人事件の容疑者グループのリーダーだと言うコンキョはあるのかよ!?」
「ふざけんなよ虫ケラ野郎!!てめえはAさんに強い怒りを持っていた!!その結果、女性職員さんをレイプして殺した!!その前に、大明神池《だいみょうじんいけ》の草むらでAさんが亡くなった!!」
「オレは知らないよ!!知らねーもんは知らねーよ!!」
「ふざけんなよ虫ケラ従業員!!」
「ふざけんなよはそっちだ!!虫ケラピンハネカイゴロシ魔!!ミズムシ!!インキンタムシ!!ぶっ殺してやる!!」

義兄《あに》と武方《たけかた》さんは、このあと血まみれになるまでどつきあいの大ゲンカを起こした。

どつきあいの大ゲンカは、夜になっても延々とつづいた。
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